見えないメスでがんと闘う
昨日は、中区医師会の講演会でした。
広島市民病院 放射線科 松浦 寛司 先生 「見えないメスでがんと闘う」
これまで過少評価をうけてきたと思われるがんの放射線治療の話でした。
大変興味深く、放射線治療学についてもっと知りたいと思いました。
以下引用
なぜ日本では放射線治療が浸透しない?
理由1 日本のがん治療は”手術”を中心に組み立てられてきた
理由2 原爆や国内外の原発事故の歴史から、”放射線”に対して身体に悪い、危険などリスクに関する負のイメージが多い。
理由3 新型コロナ肺炎で女優の岡江久美子さんが亡くなられた際、「放射線治療による免疫低下が重症化した原因ではないか」との誤った見解が大々的に流布され、放射線治療のイメージがさらに悪化した
理由4 悪いイメージを変える”放射線腫瘍医自身の啓発活動”が足りない
その他
#1 放射線治療医は欧米ではメジャーな地位にあるが、日本ではなりてが少なく困っている。
#2 放射線治療は、治療機器が最新であるとか高性能であるかよりも、治療医の腕が重要。 医師によって照射範囲はばらばら。経験がものをいう分野。
#3 放射線治療のお勧めは、食道がんと肺癌。
#4 胃癌の放射線照射が増えている。胃の痛みや止血に用いられる。
#5 在宅の患者さんには大線量照射で回数を減らす方法がある。
#6 癌の骨転移は2か月もあれば痛みが止まる。骨は再生しやすい。
#7 放射線治療は進歩している。強度変調放射線照射でより安全に大量に照射できる。
#8 早期非小細胞肺癌の5年生存率は手術と変わらない。(とはいっても、標準治療は手術)
#9 京大病院では、癌の診療の初診時に複数の科を受診するシステムになっている。(たとえば膀胱がんなら、泌尿器科と放射線科療法の受診)
#10 Metastatic Spinal Cord Compressionについて 転移性脊髄圧迫 対麻痺をきたす。
腫瘍救急として重要である。とにかく、早く気づいて早期治療が必要である。
以下引用
米国でのMSCCに対する医師の認識
・米国では、多科にわたる医師とコメディカルがMSCCの治療方針にたいしていつもカンファレンスが行われているため、放射線治療科への紹介や治療の遅れがおこりにくい。
・日本では、主担当医が自分で判断しないといけないため、相談するタイミングを逃したり、治療開始が遅れる事が大きな問題。
・商社の効果が期待できる脊椎転移で、勝者開始遅延により下肢麻痺が生じると、訴訟になった場合に医師が降りになることがある。
英国国立医療技術評価機構のガイドライン
MSCC早期発見のための優先事項
・骨転移の高リスクがん患者、骨転移を有する癌患者、脊椎の痛みがある患者に対してMSCC徴候を通知
・がん患者、家族、介護者、主治医に、MSCC徴候があった場合の対応方法をパンフレットなどで情報提供
・脊椎転移を疑うような頸痛、背痛、筋力低下、歩行困難、知覚障害、膀胱直腸障害などの症状があった場合、直ちにMSCCコーディネーターにコンタクトを取る。
#11 がん治療における放射線治療の役割は重要である。
#12 外科で治療できないときに、治療ができる。
#13 守備範囲が広い治療である。
コメント:癌治療の選択肢が増えることは、素晴らしいことだと思います。(超多忙でらっしゃいますが、セカンドオピニオンも受けていただけるとのことでした。)