(ビスフォスフォネート製剤で)顎骨壊死はなぜ起こる?

2017年9月6日 再掲 (ビスフォスフォネート製剤で)顎骨壊死はなぜ起こる?

月間保団連9月号より

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科歯科機能形態学分野教授 後藤 哲哉

以下引用

 骨粗鬆症の薬剤療法として著しい発展をしたのがBP製剤である。BP製剤は基本的に破骨細胞を標的とした、旧来の特定病院論的な治療法であり、他因子病因にもかかわらずボトルネックを強制的に作るようなやり方ではあるが、骨折リスクを減らすという点においては効果が得られている。 ただし、BP製剤には他の薬剤には見られない特徴がある。

1つは、骨に沈着するために患者の骨におけるBP製剤の骨内半減期は数年から11年ほどという報告があり、一般的な薬剤に比べその作用期間が極めて長いことである。

もう1つは、破骨細胞の機能を抑制するために、本来人体に備わっている骨代謝が抑制され、古い骨が排除されることなく残ってしまい、骨質としては悪化してしまうことである。実際、アレンドロネートの長期投与で骨折リスクの増加が報告されている。

さまざまなBP製剤が開発された1990年代初頭は、動物実験による報告や臨床治験もおこなわれてきたが、上記のようなBP製剤の問題はほとんど指摘されなかった。われわれも2000年頃、動物実験でBP製剤を使っていたが、BP製剤が骨形成にも促進的な影響があるかもしれないと考えていた。

しかしながら、顎骨壊死のようなBP製剤に関連した副作用が生じるとは全く予想していなかった。当時は、骨代謝が活発な若年者にBP製剤を使うのは骨代謝のバランスを壊すことになりよくないが、高齢者では骨代謝が活発ではなく、バランスが乱れた状態なのでBP製剤を使っても大きな問題は生じないであろうと考えていた。つまり、高齢者でも抜歯後の抜歯窪の修復のような急速な骨改造を必要とするような状況はあまり考慮していなかったのである。