レストレスレッグ症候群では自殺および自傷のリスクが約3倍に上昇する。
レストレスレッグ症候群は、一般にむずむず脚と呼ばれる状態である。意識的に問診をしなかった頃は、めずらしい病態と感じていたが、今ではありふれていると感じている。女性が圧倒的に多いと思う。
若年層女性のむずむず脚の大半は、鉄不足だろう。
フェリチンを75以上(以前は50以上)にすることが勧められている。
鉄不足は、むずむず脚、うつ、肩こり、立ちくらみ、いらいら、不安焦燥など、さまざまな症状を引き起こす。
以下引用
診療報酬のビッグデータを利用した研究から、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群(RLS)患者ではそうでない者と比べて自殺および自傷のリスクが約3倍に上昇することが示された。米・Pennsylvania State UniversityのSheng Zhuang氏らは、2006~14年の米国人17万例弱のレセプトデータを解析した結果をJAMA Netw Open(2019; 2: e199966)に発表した。
発生率低いRLSと自殺、ビッグデータで検討可能に
RLSでは下肢に虫がはうような不快感を引き起こすため、患者は下肢を動かしたいという強い衝動に駆られる。夜間に発生することが多く、米国人口の約5%に見られる。RLSの原因は明らかでないが、これまでの研究で鉄欠乏や脳内ドパミン量の減少との関連が指摘されている。
Zhuang氏らは、薬剤処方データベースTruven Health社のMarketScan Commercial Claims and Encountersデータベースから、2006~14年の入院および外来サービス、外来処方箋に対する支払いおよび請求データを検索。ベースライン(2006~08年)時に自殺企図、自傷、心血管疾患、がんの既往歴がなく妊娠していない成人RLS患者2万4,179例と、年齢および性をマッチさせた非RLS患者14万5,194例の計16万9,373例(平均年齢49.4歳、男性31.5%)のレセプトデータを抽出、解析した。
研究責任者で同大学のXiang Gao氏は「10年以上前から、RLSと自殺との関連について研究を行いたいと考えていたが、RLSも自殺も発生率が低くデータが少ないため不可能だった。当大学に移籍して2億人超のビッグデータにアクセスできるようになったことで、ようやく検討が可能になった」と述べている。
RLSは自殺・自傷の独立した危険因子
平均5.2年の追跡期間中に、自殺・自傷が119例発生していた。
年齢、性、生活習慣因子(飲酒、肥満など)、慢性疾患(うつ病、不眠症、糖尿病、慢性腎臓病、末梢神経障害、鉄欠乏性貧血、パーキンソン病など)、服薬などの交絡因子を調整後、RLS患者は非RLS患者に比べて自殺・自傷リスクが有意に高かった(調整後ハザード比2.66、95%CI 1.70~4.15)。
また、うつ病、不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸などの慢性疾患を有する患者を除外した解析(RLS以外に健康上の問題がないと推定される患者が対象)でも、結果は同様であった(調整後ハザード比4.14、95%CI 2.17~7.92)。
共著者で同大学のMuzi Na氏は「交絡因子を調整後も両者の関連性が維持されていたことから、RLSは自殺・自傷の独立した危険因子の可能性がある」と指摘している。
RLS患者の精神的健康に配慮すべき
以上の結果を踏まえ、Gao氏は「われわれの研究は、RLSが身体症状だけでなくメンタルヘルスにも影響を及ぼす疾患であることを示唆している」と指摘。「米国ではRLSが過小診断されている一方で、自殺率は上昇傾向にある。今回の知見は、RLS患者のメンタルヘルスに特別の注意を払う必要があることを示している」と注意を促している。さらに「今後の研究で、結果の再現性を検証する必要がある」と付言している。