MGUSの中に潜むMGRSの概念とマネージメント
日本内科学会雑誌 2023年11月号より
多発性骨髄腫の前段階と称されるMGUSは、その腫瘍量の少なさから臓器障害を伴わないとされてきた。しかし近年MGUSにおいても、産生されたM蛋白による腎障害を呈することが明らかになり、これをMGRS (monoclonal gammopathy of renal significance)と定義した。抗腫瘍療法による腎予後の改善が期待されるが、診断、治療方針などに関する議題は多く、認知度の低さによる見診断例も多いと良そうされる。腎臓内科、血液内科、病理医をはじめ、腎臓を診るすべての医師がMGRSを認識する必要がある。
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症は多発性骨髄腫の前段階とも言われ、50歳以上の約2%が罹患しているとされる。
MGUSの時点で形質細胞は腫瘍化しているが、その絶対量は少なく増殖能も弱い。そこの付加的な遺伝子異常が加わることで増殖能が増し、くすぶり方ММ、その後症候性ММと進行するのが典型例である。年に約1%、10年で約12%がMGUSが症候性ММに進行するとされる。
すでに有名なMGUSの一型が存在し、それがALアミロイドーシスである。
では、どのようにしてMGRSを診断していくべきか、まず原因不明の腎機能障害をみた時は、鑑別にMGRSを挙げるべきである。
ALアミロイドーシスがMGUSに合併した際は先述のCRAB症状(高カルシウム血症、腎不全、貧血、骨病変)よりもむしろ、動悸、息切れ(心アミロイドーシス)、体重減少、下痢(消化管アミロイドーシス)、四肢のしびれや立ちくらみ、排尿異常、便秘(神経アミロイドーシス)、巨舌、甲状腺や肝の腫大などの非特異的な症状を呈する。腎アミロイドーシスの場合は、ネフローゼ症候群が主たる臨床症状となり、一部の症例では腎機能低下、血尿を認める。
なかなかこの病気は、思いつきにくいと思う。