実地医家が知っておくべき臨床栄養学・・・慢性腎臓病
日本臨床内科学会誌 2023年6月号より
脇野 修先生(徳島大学腎臓内科)
その一方で、透析患者においてタンパク制限は解消される。食事摂取基準では0.9-1.3g/kg標準体重/日となっており健常人と同じかそれ以上必要となっている。この根拠は透析患者にタンパク質とエネルギーを消耗する病態Protein enegy wasting(PEW)があるためである。PEWはサルコペニアやリポディストロフィー、フレイルに通じる病態で、消耗性の病態を指す。これらの患者にPEWが生じる原因は多岐にわたり、尿毒症による食欲低下、腎不全による食事制限のみならず、内分泌異常すなわちインスリン抵抗性やビタミンD不足、二次性副甲状腺機能亢進症の影響、透析中のアミノ酸の喪失、透析治療に伴う炎症、カテーテル挿入に伴う炎症、さらに、腎不全の原疾患などである。これらの原因がCKD患者に対し、微小炎症、尿毒症、低栄養を引き起こし、体タンパク、体脂肪を喪失するのである。したがって、健常人のタンパク質の必要量0.9g/kg理想体重/日より多くのタンパク質を必要とする。実際安定した血液透析患者のタンパク摂取量と生存率との関係を検討した観察で1.0-1.3g/kg理想体重/日で最も死亡率が低かったというデータが知られている。
コメント:透析中も蛋白制限を勧めているらしい透析病院があるのだが。なぜだろうか?