聴診器
日本臨床内科会会誌 2024年9月号より部分引用
友永 轟先生
開業して間もない頃、海外出張していたご夫妻がこられて、奥さんが香港あたりで脳梗塞を発症し診てもらいたいとのことでした。聴診器を当てると、僧帽弁狭窄症の拡張期ランブルが聞えたことから「弁膜症による心房細動で脳梗塞を起こしたのでしょう」と、検査をする前に説明ができました。その後、御主人が高齢になり往診をするようになりました。この方は時々呼吸困難発作が起こり、往診すると必ずいっていいほど僧帽弁閉鎖不全症の収縮期雑音が聴取されました。普段は聞こえませんので乳頭筋不全によるものだと診断出来ました。
聴診器はその軽便さに比べ、得られる情報は大変豊かです。ですが、日々の診療では冒頭に挙げた例は稀で、ほとんどは何も所見がなく無事に経過していることを確認するにすぎません。
・・・・聴診に熱心なのは呼吸器科と循環器科くらいで、それも何かない限り毎回聴診をすることはないのです。胸の音を聴くより、X線を撮った方が早いということです。
コメント:身体診察や病歴などで診断ができるドクターに憧れます。