グルタチオン点滴について
認知症治療研究会会誌1 4巻より
柳澤 厚生先生
アミノ酸である還元型グルタチオンを点滴静注する日本の保険診療では肝機能障害、急性・慢性湿疹の治療として200-500㎎の血管内投与をしていた。総合医療では、パーキンソン病、レビー小体病、癌化学療法における末梢神経障害、閉塞性動脈硬化症、慢性疲労、重金属解毒などに、800-4000㎎の大量が用いられる。
パーキンソン病の治療としては、1996年にイタリアのササリ大学神経内科で臨床試験が行われ、機能障害スケールで42%の改善が報告された。パーキンソン病におけるグルタチオン点滴は2000年代には米国を中心に世界に広がり、南フロリダ大学医学部でも良好な成績が発表されている。日本では2007年より筆者がパーキンソン病治療に始めたのが最初である。レビー小体型認知症に対するグルタチオン点滴は、私が知る限りコウノメソッドが世界で初めてである。
シスプラチン化学療法にグルタチオン点滴を併用すると、シスプラチンの効果、末梢神経障害の出現率、輸血量などすべての点で患者に有利に働く。その他、下肢閉塞性動脈硬化症でも有意に歩行距離が改善している。このようにグルタチオン点滴はエビデンスがあり、かつ副作用0.1%以下と安全でありながら、保険診療一辺倒の標準治療中心の日本では、神経専門医も循環器専門医も全く関心がない。