貧血大国・日本

この書籍で、日本人の貧血の状態がよく解ります。

引用①

東京都予防医学総会年報2013年度版の第42号によると、軽度の貧血がある男子中学生は1年生で8.6%、2年生で4.8%、3年生で5.9%、女子中学生は1年生で6.8%、2年生で9.5%、3年生で12.0%と、学年が上がるにつれて増加しています。

引用②

繰り返し述べてきたとおり、現状は「ほとんど無策」です。

その結果、50歳未満の日本人女性の22.3%が貧血で、そのうちの25.2%(全体の5.6%)は重度の貧血、また、妊婦の30-40%が貧血であるという、発展途上国に近い有病率になってしまっています

 

鉄内服による鉄過剰症をご心配するお声もよく聞きします。日本人にはヘモクロマトーシスという遺伝病はあまりないので、多くの方は心配ないはずですが、ご心配であれば、フェリチンの値を計測しながら内服されればよいと思います

引用③

過剰になると危険な鉄
一方で、体内の鉄が多ければよいというものでもありません。稀なケースですが、「鉄過剰」が問題となることもあります。
じつは、鉄不足よりも鉄過剰の方がはるかに危険である、といっても過言ではありません。
まず、どのような場合に鉄が過剰になるのかを説明しておきましょう。
端的にいえば、それは「頻回な輸血」を行う場合です。
典型的には、造血器の病気である「骨髄異型性症候群」や「再生不良性貧血」の患者さんには、定期的な輸血が必要となります。
輸血に使用される血液には、1単位あたり約100-125mgの鉄が含まれています。
私達の体には、鉄を再利用したり、吸収や代謝を調整したりして、一定量を保とうとするメカニズムが備わっているのですが、輸血によってこれほどの鉄が血管に送り込まれるというのは、いわば想定外の状況。そのため、体内に大量の鉄が貯めこまれてしまうのです。
過剰になった鉄は、さまざまな臓器に沈着します。その状態が長期間続くと、肝障害、心不全、皮膚の色素沈着、糖尿病といった組織障害や臓器障害が引き起こされます。
私たち医師は、当然、輸血には危険が伴うということを熟知していなければなりません。
輸血を繰り返す場合に起こる障害としては、肝炎ウイルスなどの感染症が有名ですが、鉄過剰によって臓器が障害されることもあるのです。そのため医師は、輸血をできるだけ避けようとします。
輸血を断行するのは、1つには事故や自殺未遂などで大量に出血し、循環機能を維持するたみにやむを得ない場合ですが、その際に行うのは必要最低限の輸血であり、鉄過剰になることは普通ありません。ゆえに、鉄の過剰がもたらされるのは、「頻回な輸血」を行う場合なのです。

体内の鉄が過剰となるその他の代表的なケースとしては、「ヘモクロマトーシス」という遺伝病が挙げられます。
この病気の患者さんは、先天的に鉄の代謝障害があり、鉄を上手く体外に排出することができません。その結果として、さまざまな組織障害や臓器障害が引き起こされるのは「頻回な輸血」の場合と同様です。
日本人では稀ですが、白人では約0.6%の人にこの疾患が認められます。
治療には、体内から鉄を除去しなければなりません。瀉血を行ったり、鉄キレート剤を投与したりします。しかし、残念ながら、このような治療の効果は限定的で、ヘモクロマトーシスの患者さんの多くは、糖尿病、心筋症、肝障害などを生じ、最終的には肝硬変や肝臓がんでなくなってしまいます。一日も早く、ヘモクロマトーシスに効果的な薬が開発されることを願ってやみません。

 私達のからだにとって、鉄過剰はとても危険ですが、特定の遺伝的な素因がなければ、鉄過剰症になることはありません。読者の皆さんは、頭の片隅においておいていただくだけで十分です。

上図 Harriaon’s 17th editionより