小児の低血糖の見逃しは許されない・・・子供にふざけてお酒を飲ませてはいけない
ステップビヨンドレジデント 6巻より
小児で低血糖になるのは、糖尿病の既往がない場合、一番多いのはケトン性低血糖だ。ケトン血性低血糖は嘔吐を伴うことが多く、18か月ー5歳に多く、8歳頃にはまれになってくる。筋肉量の少ない小児では糖新生に必要なアラニンの動員ができず低血糖になりやすい。低血糖になる前にケトン尿になるので、なりやすい子供はまず尿を調べると良い。嘔吐が激しいと経口できないのでぶどう糖の注射ですぐに良くなる。またよくある胃腸炎でも9%が低血糖を合併しているという。小児の低血糖はかならずしも意識障害を伴わず、たかが胃腸炎といわずに血糖測定も忘れないようにしたいね。
乳幼児では少量のアルコールでも容易に低血糖を誘発されることがあり、死亡例も報告されている。通常普通に食事がとれている状態であっても、アルコールが入ることで重篤な低血糖になることがある。香水やマウスウオッシュにもアルコールがふくまれているが、これらにより重篤なアルコール中毒の報告はない。6歳以下の小児ではアルコール血中濃度が100㎎/㎗以下であっても重篤な低血糖をきたしてしまう。アルコール誤飲により、血糖値を保つために急速に肝臓のグリコーゲンが使われる。グリコーゲンの備蓄がなくなり次第、低血糖が発症してくる。したがって小児のアルコール誘因の低血糖では肝臓のグリコーゲンが枯渇しているので、グルカゴンを投与しても無効である。子供にふざけてお酒を飲ませてはいけないことがよくわかるだろう。酔っぱらって寝ているのではなく、低血糖で意識がないとしたら、空恐ろしい。
さすがに小児ではありえないが、アルコールを多飲していた大人が急にやめて生じるアルコール性ケトアシドーシスでも低血糖を合併することがあり、ときに激しい嘔吐を訴える。アルコールは飲んでもやめても低血糖になるんだねえ。
Losekらは蘇生処置を要した小児の18%が低血糖を呈しており治療を要したと報告しており、「ABC」ではなく、「ABC’S](S=シュガー)と覚えよう。また脱水の10%に低血糖を伴ってくることにも注目したい。胃腸炎もただ水分を補充すればいいわけではなく、低血糖も補正しないといけないのだ。小児の低血糖症状は非特異的で元気がない、易刺激性があるだけのこともある。もうルーチンに血糖測定を。