MANIFESTATIO OF IRON DEFFIENCY AND OVERLOAD

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上記より

鉄欠乏症と過剰症の症状

鉄不足は、おそらく世界で最も重要な栄養学的問題である。20億人が鉄不足の影響を受けている。一般に鉄の摂取量はエネルギー摂取量に比例する。鉄の需要がエネルギー必要量よりも多い場合、貧血となる。鉄欠乏性貧血は、とりわけ女性と子どもにとって問題である。WHOの見積もりは気にかかる。発展途上国の、5歳以下の39%、5歳から14歳の48%、42%の女性が貧血に苦しみ、半数は鉄欠乏がある。

軽度の鉄欠乏は、ヘモグロビンの代償作用や脳や心臓への血液の再分布、心拍出量の増加などでカバーされる。鉄欠乏で酸素によるエネルギー産生が低下すると、ワークパフォーマンスは低下する。重度の鉄不足ではアシドーシスが発生する。貧血は寒冷状態における体温調節作用を低下させる。これは甲状腺ペルオキシダーゼ(ヘム依存の酵素)による甲状腺ホルモンの合成が低下するためである。レストレスレッグ症候群は、ドーパミン機能の低下が原因となる。(ドーパミン合成も鉄と関係する。)鉄不足は免疫機能を低下させる。鉄はミエロペルオキシダーゼ活性、すなわち感染時に、活性酸素を発生する作用に関与している。そして、鉄の減少は、リンパ球と好中球機能の低下につながる。呼吸器感染症の頻度増加と罹病期間延長が、鉄不足の子どもに認められる。幼少時の脳内の鉄不足は発達障害をおこし、鉄の補充でも改善しないかもしれない。鉄欠乏は早産と低体重出生の頻度を増やし、深刻な場合は周産期母子死亡リスクを増やす。

 

逆に鉄過剰症が問題となることもある。遺伝性ヘモクロマトーシスは、HFE,TfR2, HjV,HAMP,FPN遺伝子欠損でおこる。他の遺伝的原因として、aceruloplasminemia, hypotransferrinemia, iron-loading anemia(サラセミア・インターメディア)、フライドリッヒ失調症、ポルフィリア・cutaneatardaなどがある。 DMT1遺伝子の変異とフェリチンのヘビーチェーン遺伝子の変異も鉄の過剰をおこす。北ヨーロッパ人の80%以上の遺伝性ヘモクロマトーシス患者は、C282Y HFE遺伝子を2つもつ。しかしながら、多くのこの遺伝子キャリアーは鉄過剰の症状を発症しない。この遺伝子を2つ持つ人の200人に1人が発症する。

後天的な鉄過剰状態も一般的に存在する。輸血依存(溶血性貧血、鉄芽球性貧血、サラセミア)、透析、食事、経管栄養、慢性肝疾患(アルコール、ウイルス、代謝病)などが原因となる。鉄関連の酸化ストレスは、初期には心臓や内分泌などが影響を受けやすい。これらの臓器はミトコンドリアが多く、そして抗酸化作用が弱いためである。結果的に、心不全と内分泌障害(糖尿病)がおこる。肝臓は鉄の貯蔵作用があり、鉄の過剰で肝腫大をきたし、繊維化、肝硬変、肝細胞癌をおこす。キレーション療法や瀉血などが鉄を減らすために行われる。