亜鉛投与の有害事象・・・亜鉛欠乏症の診療指針2018より

日本臨床栄養学会雑誌 Vol.40 No.2 別刷 より

以下引用

・亜鉛投与による有害事象として、嘔気・嘔吐・腹痛などの消化器症状、血清膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の上昇、銅欠乏による貧血・神経症障害、鉄欠乏による貧血が報告されている。

・したがって亜鉛投与中は、血清亜鉛値および血清銅値や血清鉄値を経時的(数ヶ月ごと)に測定することが必要である。

 

亜鉛補充投与で、消化器症状(嘔気、腹痛)、血清膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)上昇はよくみられる有害事象・副作用である。しかしこれらの症状・所見はいずれも軽度で、重篤なものは稀で、服薬中止にいたることはほとんどない。血清膵酵素の上昇も全く無症状で、いわゆる急性膵炎ではなく、経過観察だけでよいとされている。Wilson病では、銅欠乏による神経症状発現の報告がある。

 

注意すべきことは、亜鉛投与で銅欠乏をきたすことがある。亜鉛の長期大量経口投与は銅の腸管での吸収を疎外するのが原因である。銅欠乏で白血球減少も生じる。亜鉛投与により銅欠乏をきたした報告例は表14に示す。基礎疾患は多岐にわたっている。投与量は亜鉛として1-3歳で8-24㎎/日、成人では110-200㎎であり、投与期間は1ヶ月から5年であった。

 

銅欠乏発現時の血清銅値は10μg/dl未満の症例が多く、血清亜鉛値は190-250μg/dlの症例が多かった。このことから、血清銅が20-30μg/dl、血清亜鉛値が200μを超える場合には、銅欠乏に注意する必要がある。

また、稀ではあるが、亜鉛投与によって腸管における鉄の吸収阻害がおこり鉄欠乏になることがある。血清鉄濃度の減少、血清フェリチン値の低下、血清セルロプラスミン減少によるferroxidase活性の減少などが報告されている。したがって、銅と同様に鉄欠乏に関しても注意する必要がある。

 あまり多くはないですが、血液学の領域では銅欠乏による鉄芽球性貧血があります。