新しい変化はアングロサクソンから生まれる

エマニュエル・トッド著「問題は英国ではない、EUなのだ」より引用

 もしネオリベラリズムに変わる新しい潮流が生まれるとすれば、それは、アングロサクソン社会、とりわけアメリカからではないかと思います。アメリカは出生率が高く、人口学的な問題を抱えておらず、1960年代~1990年代の教育や文化の危機を乗り越えて、徐徐に社会的安定期にはいっているからです。
 そもそも英米の優位が確定したのは、イギリスが世界で最初に「国家」として機能したからです。効率のよい国家を最初に創ったのです。そこにアングロサクソン成功の起源があります。
 イギリスが最初に形成した国家は、民主主義の国民国家とは言えません。象徴的な存在としての国家でした。議会はありましたが、大きな官僚制度をもっていたわけではありません。王は存在しても、それほど中央集権的ではなく、地方のエリートが統治する国家でした。それがかえって効率の良い国家運営につながったのです。島国で、同質性が高く、規模が大きすぎなかったことも有利に働きました。このようなイギリスの国家は、絶対王政のフランス国家に先んじた存在だったといえます。
 ネオリベラリズム、グローバリズムが限界に達しつつある今日の文脈において、アングロサクソン社会の先進性が国家にこそあったことを思い起こす必要があります。

 アングロサクソン(英、米)が世界を制覇したことには、理由がある。

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