小児の骨発育とその異常・・・栄養障害性くる病

 日経メディカル 特別編 2018.12より引用

 はっきりした骨軟化症はそう多くなくても、”潜在性”骨軟化症・くる病により引き起こされている症状(アレルギー、アトピーなど)が今日的課題ではないでしょうか。

 

上述のように骨の石灰化にはカルシウムが必要で、その吸収にはビタミンDが必要である。カルシウム欠乏およびビタミンD欠乏によるくる病を総称して栄養障害性くる病と呼ぶ。臨床的には、歩行開始後に目立つO脚長管骨関節部腫脹やろく軟骨の腫脹(肋骨念珠)、成長障害などがみられる。乳児期には低カルシウム血症に伴うテタニー・けいれんなどがみられることもある。ビタミンD欠乏の診断は血中25水酸化ビタミンD(25-OHD)濃度に行うことが重要で、20ng/dL未満をビタミンD欠乏症とする報告が多いが、12-15ng/dL未満とする報告もある。25-OHDの測定は一定の条件で保険適応される。

 小児期は骨成長が盛んであり、ビタミンDの必要量も多い。ビタミンDの欠乏によりくる病がもたらされるが、近年、先進国においてもくる病の増加が指摘されている。ビタミンD欠乏症の危険因子としては、日光照射不足、皮膚の高い色素含量、菜食主義、母親のビタミンD不足、ビタミン補充のない完全母乳栄養などが挙げられる。わが国の最近の傾向として、アレルギー疾患に対する過度の食事制限や偏食、生活習慣の変化による日光照射不足が増えている。

 カルシウムは骨・軟骨石灰化に関して必須の働きを担っている。血清カルシウム値は厳格に制御され、軽度のカルシウム摂取不足では低下しないように調節されている。しかし、カルシウム摂取不足は、長期的には歯、骨、爪等に様々な障害をもたらす。カルシウムは体内では99%が歯と骨に存在し、人の骨格を形成するとともに、骨吸収によりカルシウムが血中に供給されることで、カルシウムの恒常性維持に役立っている。わが国においてカルシウムは、摂取不足となっている代表的栄養素である。
 骨の石灰化異常は、エックス連鎖低リン血症性くる病・骨軟化症・低フォスファターゼ症などでもみられるが、割愛する。