本態性血小板血症について

日本内科学会雑誌 2026年7月号より引用

 1)病態
ETの疾患ドライバー変異としては、PVと同様のJAK2変異の他に、CALR変異、MPL変異が認められる。ET全体の疾患ドライバー変異として、JAK2 V617Fが50-60%、CARL変異が20%程度、MPL変異が5%程度を占め、triple-negativeと言われる、いずれの遺伝子変異も陰性である患者群が10‐20%程度存在すると報告されている。JAK2変異が存在するETでは血小板増多が目立つが、PVと同様の機序で、白血球増多やPVの診断基準を満たさないレベルの多血が併存することが多い。CALRは小胞体に存在するシャペロン蛋白であるが、exon9にフレームシフト変異をきたすと、C末端の入る津変化が起こり、小胞体から細胞外へ放出され、TPO受容体に結合する。そのため、TPO受容体がリガンド非依存的に活性化され、血小板増多のみが目立つETとなる。MPLはTPO受容体をコードする遺伝子であり、EXON10に遺伝子変異が起こると、やはりTPO受容体がリガンド非依存的に活性化され、血小板増多のみが目立つETとなる事が多い。

2)診断
血小板数の基準は45万以上である。遺伝子変異検索や骨髄生検結果などから慢性骨髄性白血病やPV、原発性骨髄繊維症など、他の骨髄系腫瘍を除外診断することが必要である。特に疾患ドライバー変異が全く同一であり、血小板増多を来すことが多い前線維化期骨髄繊維症とETとの鑑別が非常に重要である。骨髄生検所見ではETでは骨髄は正形成で巨核球は過分葉の成熟したものが多いのに対して、profibrotic MFでは骨髄は顆粒球系優位の過形成で巨核球は疎なクラスターを形成し、増加している。巨核球の各は球状で雲状のクロマチン構造を示す。臨床所見からの診断予測としては、Prolifatic MF の診断基準の小基準である貧血、白血球数1.1万以上、脾腫、LDHの上昇が複数存在する場合は、Prolifatic MFの可能性がより高くなる。また、JAK2,CALR,MPL変異などのMPNに特異的な疾患ドライバー変異が存在しない場合は反応性血小板増多症との鑑別が難しい場合も多い。G-BANDING法による染色体異常や次世代シークエンシングなどによるクローン性ドライバー変異の存在などが診断の一助となる場合もあるが、日常診療においては慢性炎症や鉄欠乏性貧血など、反応性血小板増多症をまず鑑別することが重要となる。

3)治療
Barbutらの従来型血栓症リスクの分類はETでも同様に使用される。ETに特異的な血栓所リスク分類としてはIPSET-THROMBOSIS, reversed IPSET thrombusなどもある。血栓症低リスクETにおいてはJAK2変異を変異陽性または心血管リスクがある場合に低用量アスピリンがすすめられ、それ以外では慎重な経過観察が推奨される。血小板増多を認めるという理由のみで安易にアスピリンを開始することはさけるべきで、フォン・ビルブランド因子活性が20-30%以上あることを確認してから抗血小板療法を開始する。また、PVと同様に、表3に示すような所見があった場合には、低リスクETでも細胞減少療法の総体的適応となる。血栓症高リスクETでは原則、低用量アスピリンによる抗血小板療法に加えて細胞減少療法が勧められる。現時点ではETに対する細胞減少療法として本邦で保険承認されているのは、HU,アナグレリド、MCNUであるが、実際にはアルキル化剤であるMCNUはPV同様使用されることは少ない。HUとANAでは有害事象のプロファイルが異なるため、どちらを使用するかは患者ともよく話し合って選択する。

4)ETの最近のトピックス
repegIFNα2bの有用性