悪性症候群とセロトニン症候群

日本内科学会雑誌 2023年12月号より

悪性症候群はドパミン受容体遮断作用をもつ薬剤の使用や、ドパミン受容体刺激作用を持つ薬剤の中断によって生じる。対してセロトニン症候群は、セロトニン受容体を直接的/間接的に刺激する薬剤の使用によって生じる。セロトニン症候群は神経伝達が亢進している状態とイメージしておくと良く、そのために下痢や腱反射亢進やミオクローヌスが認められやすく、悪性症候群との鑑別ポイントとなる。

 

 

以下 メディカルノートより

悪性症候群は抗精神病薬などの使用に伴ってまれに起こる重篤な副作用です。発熱、意識障害、筋強剛などの錐体外路すいたいがいろ*症状、自律神経障害などの症状がみられます。

原因となる薬剤は、主に抗精神病薬ですが、パーキンソン病治療薬の減量・中止に伴って生じる場合もあります。また、もともと抗精神病薬として開発された薬剤の一部に制吐薬として適用されているものがあることから、制吐薬(プリンペラン)による発症も報告されています。抗精神病薬を服用している人の中で悪性症候群を合併する頻度は0.02~3%とされており、頻度は高くありません。しかし、悪性症候群は潜在的には致死性のある副作用であることから、早期に発見して適切に治療する必要があります。

悪性症候群とセロトニン症候群の違いは?

悪性症候群とセロトニン症候群は、発熱、意識障害、自律神経症状、筋強剛など、比較的似た症状を引き起こすため、
以前は、混同されることもよくありましたが、セロトニン症候群では悪寒、ミオクローヌスがより強く見られ、悪性症候群では筋強剛、発熱、CPK上昇などが強く見られる点で違いがあります。

また、悪性症候群は高力価抗精神病薬の増量や抗パーキンソン薬の減量などの要因で起こりやすいのに対し、セロトニン症候群は抗うつ薬などのセロトニン作動薬の服用によって起こるため、患者の服用薬などから推測できる場合もあります。

一般にセロトニン症候群は症状の発現が数時間と早く症状が軽いのに対し、悪性症候群は症状の発現に時間が数日かかり症状が重いとされています。
セロトニン症候群の発熱は37~38℃程度で、悪性症候群では39℃を超える。