ナラティブアプローチとは
日本内科学会雑誌 2023年12月号より
読んでも、よくわからないのですが、筆者の熱量を感じます。
ナラディブとはつまるところ、語り手と聞き手の間にある物語を語り手が語り、傾聴して受け取った物語を聞き手が語り手に返還し、返還された物語を語り手がさらに語り直すという物語の循環を介して、物語が(しばしば語りての意図を超えて)変容し、新たな意味が付与される場、空間、機会、プロセス、相互関係性を表す言葉である。特定の語り手と聞き手がセットになった物語という概念こそが、なぜ臨床でナラティブが注目されているかの理由
小説家がなかなか一言では言い表せない、人生の様々で複雑で繊細な事柄(人生とは何か?なぜ人は苦しむのか?愛とは何か?人間とは何か?自分とは何者か?など)を、物語で表すために小説を書くように、患者もまた「自分はなぜ病気になってしまったのか?」「この病気に意味はあるのか?」「病気になった私の人生の意味は何なのか?」という一言では定義しにくいがしかし、問わざるを得ない問いに具体的にこたえるために、まさに文字通り生き残りをかけて物語を語るのである。私たち専門家の前で物語る患者は実は、体の部分の修復のみならず、難破して壊れてしまった彼らの人生の物語を修復して新たに意味づけするのを手伝って欲しいと言っているのである。この意味で、臨床とは生活者である患者と専門家である医療者がである場所である。
ナラティブとは単なる(患者を変えるための)コミュニュケーションスキルにあらず、むしろ専門家自身が変わる覚悟で患者に向きあう姿勢である。そして専門家このような姿勢を取るとき、患者と専門家の間での物語の循環/共同著作が促進され、ひいては既存の専門分野では思いもつかないような、決して教科書やガイドラインや法律には載っていないような、患者の幸福(最大限の倫理)を実現する選択肢(可能性)が見えてくるのである。