大阪大学の癌ケトン食研究
Long-Term Effects of a Ketogenic Diet for Cancer
がん患者向けの新たなケトン食療法の臨床効果を、前回報告時(2020年)より更に3年間観察し解析した。
ケトン食療法に参加した臨床病期Ⅳ期の様々な種類の進行がん患者53名を解析対象とし、ケトン食継続12ヶ月以上群(n = 21)と12ヶ月未満群(n = 32)の2群に分けて解析した。
両群の未調整での、生存期間中央値の比較では、12ヶ月以上群:55.1ヶ月(21名中10名死亡)、12ヶ月未満群:12ヶ月(32名中31名死亡)であり、カプランマイヤー生存曲線も、12か月以上群において、有意に生存率が改善していた(ログランク検定、p<0.001)。
両群の背景因子を揃えて比較可能とするために、傾向スコアを用いた逆確率重み付け法により調整ログランク検定を施行しても、ケトン食12ヶ月以上継続群において、生存率が有意に改善していた
(調整ログランク検定、p < 0.001)。
ケトン食の長期継続は、進行がん患者の生存期間を劇的に改善させることが示された。
興味深い臨床研究報告。大阪大学。後ろ向き研究。(もともとは、江部康二先生の依頼で始まったようである。)
ドクター江部の糖尿病徒然日記 進行性がん患者で新しいケトン食療法による有望な結果 (fc2.com)
理解が難しい点があった。
専門家の批評を見てみたい。
①そもそも12か月未満群では、12か月時点で半分のケースが亡くなってしまっている。当初よりケトン食に反応がないグループが存在するのか?この2群の比較は無理があるのではないか。
(propensity score での調節でも不十分である可能性については述べられている)この調整の意味が複雑でよくわからない。
②5年以上生存した8例の報告。(54名中) 最長が10年と1か月の肺癌女性。4か月しか継続できていないケースが最長寿。
No | Sex | Age (y) * | Cancer Type | Histology | TNM Classification | Continuation of KD | Duration of KD, Weeks | OS (Months) | Current Status † |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | F | 56 | Lung cancer | Adenocarcinoma | T2aN0M1a | finished | 16 | 121 | deceased |
2 | F | 52 | Lung cancer | Adenocarcinoma | T2aN0M1b | Ongoing | 422 | 109 | alive |
3 | F | 36 | Colorectal cancer | Tubular adenocarcinoma | T4bN1aM1b | finished | 53 | 74 | alive |
4 | F | 41 | Breast cancer | Invasive ductal carcinoma | T3N1M1 | finished | 61 | 73 | alive |
5 | M | 79 | Sarcoma | Chondrosarcoma | T2N1M1 | Ongoing | 263 | 72 | alive |
6 | M | 46 | Oral and pharyngeal cancer | Adenoid cystic carcinoma | T4aN1M1 | finished | 121 | 81 | deceased |
7 | M | 55 | Lung cancer | Adenocarcinoma | T3N1M1a | Ongoing | 218 | 62 | alive |
8 | F | 50 | Colorectal cancer | Tubular adenocarcinoma | TXN1bM1a | Ongoing | 207 | 60 | alive |
・通常の肺癌(ステージ4)の5年生存率8.0%(日本)のところ、33.3%だったという。つまり、9人の肺癌患者が3か月以上のケトジェニックダイエットを行うことができ、その中の3名が5年生存した。 全部の肺癌のエントリーが14名なので、全参加者の生存率でいくと21.4%。これでも普通より良い。患者数は不十分。
・通常の大腸がん(ステージ4)の5年生存率が19.8%(日本)(転移がある場合は14%・・・米国)のところ、25%であった。つまり、8人の大腸がんが3か月以上のケトジェニックダイエットを行うことができ、その中の2人が5年生存した。 全部の大腸がんのエントリーが9名なので、全参加者の生存率でいくと、22.2%。患者数は不十分。
・転移性大腸癌著効例の報告。
③最近の薬(分子標的治療薬やチェックポイント阻害薬など)は使用されていないのだろうか。(当然使用されていないはずだが)
④癌種や病理組織による反応性の違いが不明…この点もディスカッションに記載されている。
⑤方法 1週目 1日10g以下。 2週目から3か月目まで 1日20g以下。 3か月目以降 1日30g以下。
⑥12か月未満のグループの継続期間はわずか平均3か月。継続グループの平均は44か月。
⑦1年から3年にかけて。12か月未満のグループ。16人から3人に減少。81.2%の減少
12か月以上のグループ。21人から16人に。 23.8%の減少。
この部分を見ると有効に見える。
⑧1825日の被験者が5名になっているのはなぜか? 打ち切りになったから??
⑨55人中18人は3か月継続できず、中止されている。 6名 個人的な理由 3名 他の治療を優先 3名 入院 3名 吐き気 1名 病気の進行 2名 ペットctで評価不能