COVID-19ワクチン接種後に発症した亜急性甲状腺炎の1例

広島医学76巻1号より

和久 利彦先生(府中市民病院)

以下引用

症例は35歳。女性。第1回COVID-19ワクチン接種後25日(第回ワクチン接種4日)から発熱、動悸、前頸部痛、嚥下困難が出現し当院受診。甲状腺ホルモンの上昇、炎症反応上昇、甲状腺左葉の腫脹圧痛、頚部超音波検査上の甲状腺左葉腫大と左葉内部の境界不明瞭な低エコー域の広がりを認めたことから亜急性甲状腺炎と診断した。プレドニゾロンを開始し、第1回接種後95日に甲状腺左葉の腫脹圧痛の消失、甲状腺機能性状、炎症反応陰性の継続が確認できたことからプレドニゾロンの投与を中止した。第1回接種後97日に右前頚部痛が出現し、第1回接種後100日に甲状腺左葉から右葉へ炎症が移動したと診断してプレドニゾロン+セレコキシブ投与を行った。第1回接種後170日には、頚部違和感消失、甲状腺機能正常、炎症反応陰性の継続を確認し投与中止とした。第1回接種後198日に通院終了とした。COVID-19ワクチン接種後には亜急性甲状腺炎がまれながら発症する可能性があることを銘記しておくべきである。

家族歴:母親がバセドウ病
ワクチンはファイザー社製

考察より引用

SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種後に亜急性甲状腺炎の発症を認めたとの報告は31例であり、そのメカニズムについてはいまだ不明である。

①SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンによって産生されるSARS-CoV-2スパイク蛋白と甲状腺細胞抗原の交差反応
②SARS-CoV-2ワクチンそれ自体がアジュバンド効果により免疫応答を活性化すること

などが示唆されている。

またSARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種後にバセドウ病を認めたとする報告が16例(男性3例、女性13例)あった。

コメント:新薬の実像が解明されるには時間がかかる。今後もワクチンの副作用報告は増えていくだろう。