神経管閉鎖障害予防に関する医療職の葉酸認知率
日本医師会雑誌 第147巻:第10号/平成31年1月(2019年)より
神経管閉鎖障害予防に関する医療職の葉酸認知率
近藤厚生他要旨:葉酸は神経管閉鎖障害(脊髄髄膜瘤、無脳症)の発生リスクを50-60%低減することができる。2000年に旧厚生省は、妊娠を計画中の女性は葉酸サプリメントを1日0.4mg内服するように勧告したが、脊髄髄膜瘤の発生率は減少傾向を示さなかった。2017年に6つの医療職(産婦人科医、助産師、栄養士、薬剤師、泌尿器科医、看護師)を対象として葉酸認知率を調査したところ、彼らの認知率は年々上昇していた。特に栄養士、助産師、産婦人科医のそれはおのおの75%、95%、100%と高率であった。栄養バランスのとれた食事を推奨する割合は産婦人科医、助産師、栄養士、看護師で70%以上であったが、葉酸サプリメントの推奨率はすべての職種で低率であった(12-58%)。神経管閉鎖障害を予防するために、医療職は妊婦、妊娠を計画中の女性、妊娠可能期の女性へ葉酸サプリメントを適切に摂取するよう啓発することが強く望まれる。
葉酸サプリメント内服の啓発も必要であるが、同時に国として葉酸添加政策を大胆に施行することが必要かつ有用であろう。2017年の時点で、世界の81カ国で葉酸添加政策が実施され、神経管閉鎖障害の発生率は26-50%も減少したと報告されている。