高齢者の腹部診察・・・6時間以上持続する腹痛はまずい!

臨床と研究・93巻4号(平成28年4月) 腹痛   光岡 雅文 田妻 進 著   より引用

病歴聴取では、高齢者では詳細な病歴聴取ができないことが多いので、次に述べる注意すべき腹痛かどうかをまず確認する。注意すべき腹痛には

①突然発症の腹痛

②発症時が最大の痛み

③増悪していく痛み

④6時間以上持続する痛み

⑤経口摂取できない

⑥ADLの急速な低下など

 

腹痛の発症様式と時間的経過は、原疾患の病態を解明する糸口となる。痛みの突然の発症は、

①破れる(大動脈破裂、消化管穿孔、異所性妊娠破裂、肝がん破裂など)

②つまる(心筋梗塞、腸間膜動脈塞栓症、ヘルニア嵌頓、尿管結石)

③ねじれる(絞扼性イレウス、S状結腸捻転、卵巣腫瘍茎捻転)

④裂ける(動脈乖離)

痛みの程度や性状は、重症度を推測するように有用であり、体制痛であれば緊急性が高く、手術などの緊急処置が必要な可能性が高くなる。痛みの場所は、原疾患を絞り込むのに有用である。疼痛部位だけで鑑別診断を絞り込んではいけない。(関連痛

歩行や体動で悪化(腹膜炎など)、深呼吸で悪化(胸郭筋骨格系疾患、胸膜炎、肝周囲炎など)、食後に悪化(通過障害、腸間膜動脈狭窄症)を確認する。特に歩行で悪化する痛みは腹膜炎をきたしていることがあり要注意である

 

コメント:腹痛は内科医の墓場、と言われている。