ビタミンDの栄養状態はがん患者の予後に影響する 日本医師会雑誌 第144巻・第2号/平成27年5月
2015年5月23日 再掲
Brain Grain{いつものパンがあなたを殺す}の著者 デビット・パールマターは成人の半分はビタミンDが不足しており、それがさまざまな病気の一因となっていると主張しています。
ビタミンDについての興味深い論文がありました。
ビタミンDの栄養状態はがん患者の予後に影響する
日本医師会雑誌 第144巻・第2号/平成27年5月
ビタミンDは紫外線の作用により皮膚で合成され、あるいは食事から吸収され、肝臓で25-hydroxyvitamin D{25(OH)D}、さらに腎臓で活性型の1,25-dihydroxyvitamin Dとなり、主として小腸、骨、腎臓に作用する。ビタミンDの古典的作用はCa, Pの代謝調節であるが、最近、さまざまな組織で1,25-dihydroxyvitamin Dが産生され、免疫調節、細胞増殖抑制、血圧調節、インスリン反応性に影響を及ぼしていることが明らかになった。
ビタミンDの栄養状態は血清25(OH)D濃度で評価され、20ng/ml未満はビタミンD欠乏、20-30ng/mLはビタミンD不足とみなされているが、世界中の多くの人がビタミンD不足の状態で、特にがん患者では1/3以上がビタミンD欠乏の状態にある。ビタミンD欠乏はさまざまながんの発生率を高めることが報告されているが、最近Liらは、がん診断時に血清25(OH)Dを測定済みの1万7,332症例を含む25の研究のメタ解析を行い、十分な検討が可能であった大腸がん、乳がん、リンパ腫では、血清25(OH)D濃度が上位1/4の患者の死亡の確率は、下位1/4の患者と比較して、それぞれ0.55, 0.63, 0.48低かったと報告している1)。ビタミンD不足は発がんした患者の予後を悪化させることになる。
日本人においても、ビタミンD欠乏は、7月には男女共約10%に対して、11月には男性で約30%、女性では約60%と増加し、欠乏を含む不足者は、7月には男性で約60%、女性では約80%、11月には男女共80-90%に見られた2)。
日本人も多くがビタミンD不足状態にあり、発がんの抑制、発がんした場合の予後改善のため、積極的にビタミンDを補充する必要があるかもしれない。{井廻 道夫}