寝たきり老人
以下引用
退院して住み慣れた家に帰ると多くの患者が元気になるのには驚いた。誤嚥を繰り返すため、経口摂取なんて絶対無理と言われた人が、自宅では肺炎を起こすことなく、おいしそうに食べている。自宅での生活には魔法の力がある。患者の生活環境を知り、家族と交流することができる訪問診療は楽しい。
欧米には寝たきり老人がいない。「楽しみがなければ生きていく意味はない」「食欲が低下した終末期に高齢者に食事介助をしたり、経管栄養や点滴を行うのは虐待だ」という倫理観があり、自力で食事を採れなくなった高齢者は2週間くらいで安らかに死んでいく。日本には寝たきり老人がたくさん入院している。どのように死を迎えることが本当に幸せなのか、皆で議論を進める必要がある。
倫理観は時代や国や個人によって異なっている。近年、ACP(アドバンスドケアプランニング)、人生会議などの名称で人生設計を話し合おうという流れがある。
いろんな考え方があって当然だと思う。ひとつの考え方に集約させるようなことではないと思う。
「人間は『命の大切さ』を意識しても、良心を呼び起こせない。むしろ人間の不安の源泉である『死の断絶の可能性』に直面したときこそ、倫理の扉は開くのである」