低マグネシウム血症はいつ疑う?
マグネシウムは一般臨床では、軟便剤(酸化マグネシウム)、あるいは不整脈(低カリウム血症)のときに用いられる。栄養療法では、はるかに守備範囲が広い。こむら返り、不整脈、筋骨格系の痛みなどなど。
上記より引用
1)マグネシウムの体内分布
マグネシウムは300以上の酵素反応に関係し、さまざまな内分泌機能やタンパク合成にも関与しているというから驚きである。体内のマグネシウムが血管内に存在するのは1%も満たない。つまり血清マグネシウム値を測定したところで、本当に体内のマグネシウムがどうなっているかなんてことは全く繁栄していないため、血液検査に頼ると痛い目にあうので注意されたい。
体内マグネシウムの99%以上が細胞内に存在する。そのうち2/3は骨に、残りの1/3は心筋、筋肉、肝臓などに分布する。
2)低マグネシウム血症をきたす病態
カルシウムと違い、マグネシウムのバランスは経口摂取に依存している為、マグネシウムそのものは経口摂取ができないときちんと維持できない点が特徴である。ICUに入院中の患者の65%に低マグネシウム血症を合併し、死亡率も高くなると報告がある。特に利尿薬使用や敗血症患者において著明である。ICU入院患者はおまけに低栄養状態だから、低マグネシウム血症になりやすいことも予想がつく。
一般に心不全患者の7-37%に低マグネシウム血症を合併し、利尿薬やジゴキシン、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の賦活、低栄養、低吸収などが影響していると考えられる。
利尿薬とプロトンポンプインヒビターの併せ技も低マグネシウム血症をきたすんだ。長期間利尿薬を内服している人に安易にプロトンポンプインヒビターを処方するのはダメチンだ。
3)マグネシウムと他の電解質との関係
マグネシウムはNa-K ATPポンプに必須のものであり、たとえ低カリウム血症の治療のためにカリウムを投与しても、低マグネシウム血症があると、カリウムは細胞内に入れず、反対にナトリウムは細胞外に出てこれない。このマグネシウムの補正がなされて初めて低カリウム血症に対するカリウム投与が生きてくるのだ。「カリウムとマグネシウムはお友達」って覚えるとよい。心筋梗塞の8%に低カリウム血症を伴い、その場合はカリウムとマグネシウムで治療されると報告されている。低マグネシウム血症の40-60%に低カリウム血症を合併する。腎不全では反対に高カリウム血症になって、高マグネシウム血症を伴うことが多い。またマグネシウムはカルシウムとは友達ではなく、カルシウム拮抗薬のような作用があり、平滑筋がぎゅっと締まっているのを解除する働きがある。
低マグネシウム血症は低カリウム血症の40%、低カルシウム血症の22-32%、低リン血症の30%、低ナトリウム血症の23%に合併するんだよ。
低マグネシウム血症の症状
心血管・・・不整脈、心室性不整脈(特にトルサド・ポワン)、心房細動、上室性頻脈、高血圧、血管収縮、心電図異常。
神経・・・ 痙攣、筋レンシュク、意識障害
筋肉・・・気管支収縮、筋力低下、呼吸不全
内分泌・・・インスリン抵抗性、低カリウム血症、低リン血症、低カルシウム血症、代謝性アルカローシス
その他・・・イレウス、食欲不振