再掲 鉄剤の注射の時代は終わった
昨年末、陸上選手に対する鉄剤注射が問題になっていました。
「実際のところ、鉄剤はタイムの改善に有効であった」だろうと思います。
根本的な問題は、内服でなく、注射で行った点です。
鉄剤の注射は、「体内に活性酸素を発生させる一昔前の治療法」と考えるべきだと思います。
2017年1月20日 鉄剤の注射の時代は終わった
日本内科学会雑誌 第105巻 第12号よりヘプシジンと腎性貧血 友杉 直久 著より引用
腎性貧血におけるヘプシジン
造血系に保持できなくなった鉄は鉄供給系でフェリチンとなって蓄えられている。これに刺激され、ヘプシジン発現が亢進状態になり、縮小した造血系に応じ鉄供給量は減少する。EPO(エリスロポエチン)の低下が原因なので、当然ESA(赤血球造血刺激因子製剤)投与量を増やすべきではあるが、非生理的な手段である静注鉄を投与してもヘモグロビンを増やすことは出来る。
注射剤に含まれているフリーの鉄の一部がトランスフェリンと結合し、赤芽球のTFRIを介して取り込まれるからである。
しかし、トランスフェリンとの結合には時間がかかり、その間、NTBI(non-transferrin bound iron)として酸化ストレス発生の原因になってしまう。また、トランスフェリン鉄は肝のTFR2を刺激し、ヘプシジン賛成を促進させ鉄の供給を抑制するため、マクロファージに取り込まれた注射剤のコロイド鉄は利用されにくい環境になる。つまり、注射を繰り返さない限りはヘモグロビンは維持できないことになる。
FPNの関門を通過しない非生理的な方法の限界であり、また、近年、クエン酸第二鉄の経口摂取効果が明らかとなり、注射の時代は終わった。