セレンとは

筑波大学 小児外科 増本 幸二先生

 セレンは、1817年にスウェーデンの科学者イェンス・ベルセリウスにより発見され、ギリシャ神話の月の神セレネから命名された元素です。ヒトでは、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、コバルト、クロム、モリブデンと同様に必須微量元素の一つとして、生体内における抗酸化作用や甲状腺ホルモン代謝調節などの重要な役割を果たしています。セレンは体内で合成することができないため、外部から摂取する必要があります。しかし、セレンは必要量と中毒域の幅が比較的狭く、食事などからの摂取量が不足すれば低セレン血症やセレン欠乏に至る場合があり、過剰摂取ではセレン中毒を引き起こす場合があります。

 セレンは食物中では魚介類、肉類、穀類に多く含まれており、有機セレン化合物として、主にセレノメチオニンやセレノシステインなどのセレン含有アミノ酸の形態でタンパク質中に存在しています。一方、栄養剤や治療剤に含まれるセレンには、亜セレン酸ナトリウムやセレン酸ナトリウムなどの無機セレン化合物が用いられています。