気管支拡張症について
日本内科学会雑誌 2025年10月号より
病態理解の変遷など
①気管支拡張症は、1819年にフランスの医師Rene Laennecによって初めて報告された。また、著名な医師William Oslerも気管支拡張症を基礎疾患として持ち、感染を繰り返していたと考えられている。1950年代までは、結核や重症肺感染症の後遺症として理解され、外科的切除による病巣除去が主な治療であった。しかし、結核患者数の減少、効果的な抗菌薬や定期的な予防接種うの普及、社会状況の改善により、1980年代後半には気管支拡張症は希少疾患とみなされるようになった。その後、以下の要因により、気管支拡張症への関心と研究報告数が増加した。
・1990年代以降の高分解能CTの普及:これにより、従来は診断が困難であった軽症や初期の気管支拡張症も診断可能となった。
・世界的な人口の高齢化:これに伴い、肺非結核性抗酸菌症(NTM)を含む慢性感染症が増加した。
・病態背景の多様性の解明:かつては感染後の後遺症として一括りにされていた気管支拡張症が、免疫異常(低ガンマグロブリン血症など)、アレルギー性疾患、のう胞性繊維症、原発性線毛機能不全症(PCD)など、様々な疾患に関連し、多様な病態背景が存在することが明らかとなった。
②中国では罹患率が非常に高く、10万人にあたり12487例という報告があるが、これはかつて結核の罹患率が高かった歴史的要因に関連している可能性がある。
③日本の女性における気管支拡張症の増加には、NTM症の増加が大きく関与している可能性が示唆されている。