顎骨壊死の頻度・・・抗RANKL抗体など

広島医学会雑誌 2026年2月号 「誤嚥性肺炎だけではない」 猪原 健先生

在宅現場における顎骨壊死:がん・骨粗しょう症との接点より

近年、在宅医療の現場では骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の症例が急増している。顎骨壊死の原因としては、頭頚部がんに対する放射線性骨壊死に加え、骨粗しょう症に対する低用量ビスフォスフォネート製剤・抗RANKL抗体製剤や、乳癌・前立腺がん・肺癌など骨転移を伴う悪性腫瘍に対する高容量抗RANKL体製剤が重要である。特に問題となっているのは、後者の悪性腫瘍に対する高容量RANKL抗体製剤である。

乳癌では生涯14人に1人が罹患し、骨転移を伴う症例には骨修飾薬の使用が標準治療とされる。一方、顎骨壊死はQOLを著しく低下させる有害事象である。ただ顎骨壊死の発症は比較的少ない副作用とされ、これまで発症率は1-2%と報告されていた。しかしこの数値は実際の臨床実感と大きくかけ離れていると感じていたところ、長崎大学による前向き追跡調査の結果が明らかになった。報告によると1年目:8.1%、3年目:18.2%、5年目:23.3%であり、かなりの割合で発症していることが分かった。

在宅医療の現場においては、若くして乳癌を患い在宅療養を選択されている方の診療にあたることが少なくない。また前立腺がんは高齢男性に多く、要介護状態の方も多い。このことから、在宅歯科がMRONJの治療・管理を行う機会が増えてきている。MRONJは、抜歯を原因として発症すると考えられてきたが、近年では、う蝕に伴う根尖性歯周炎や、歯周病、義歯不適合による義歯性潰瘍などの、慢性の感染性炎症がに抗RANKL抗体製剤よって顕在化したものであるとされている。骨吸収抑制薬開始前のリスク評価と、投与期間中の定期的な口腔ケアを地域の歯科診療所が担う体制構築が望まれる。