HELLP症候群とは

日経メディカル2017年7月号より

 HELLP症候群は、妊娠後期または周産期に発症する病態で、主要兆候の英語の頭文字(Hemolysis(溶血),Elevated liver enzyme, Low Platelet)
を取って名付けられている。妊娠高血圧症候群の一病型であるが、高血圧が先行するとは限らない。
初発症状は、心窩部痛や「腹部が張る感じ」などの腹部・消化器症状が多い。倦怠感や発熱、浮腫の増悪など非特異的な症状に加え、黄疸、出血傾向、子癇発作の前駆症状である頭痛、眼症状なども出現する。HELLP症候群は妊娠高血圧症候群に続発しやすいが、正常血圧妊婦であっても発症することがある。診断が遅れ適切な対処が行われなければ、播種性血管内凝固症候群、常位胎盤早期剝離、腎不全などを合併し死亡率が高くなる。
SIBAIの診断基準では、⑴肝機能異常、血清AST 70以上、LDH 600以上、⑵溶血、血清間接ビリルビン1.2以上、血清LDH 600以上、破砕赤血球など赤血球の形態異常の出現、⑶血小板減少 10万以下 を満たせば確定診断できる。この基準をすべて満たさなくても、妊産婦が⑴AST,LDHが正常値を超えて高値、⑵血清間接ビリルビンやLDHが高値、⑶血小板15万以下 ⑷血中アンチトロンビン活性が正常の80%未満、ハプトグロビン値の低下、のうち1つでも満たす場合は、HELLP症候群を疑って対処する必要がある。
治療の原則は、帝王切開を含む急速分娩による妊娠の終了である。

ポイント 妊娠後半期の消化器症状ではHELLP症候群を念頭に血液検査を