家族性高コレステロール血症の病態

上記より引用

① 家族性高コレステロール血症について

そこで重要となってくるのが、一番目の前向き研究だ。この研究は、最初に採血しておき、その後の15年間を追跡している。しかる後に、冠動脈疾患で亡くなった人と冠動脈疾患を起していない人を比較している。それももやはり、差はないのだ(総コレステロールの値に)。

つまり、家族性高コレステロール血症の患者というだけでは、コレステロールが危険因子とはいえないのである。

②なぜ、彼ら(家族性高コレステロール血症)には特別に心筋梗塞が多いのだろう。彼らのLDL受容体の半分が遺伝的に破損していることはすでに書いたが、そのためLDLが細胞に半分運ばれなくなる。LDLが運ぶ重要な栄養素が届かないことになる。
栄養素の1つはコレステロールそのもの。次にリン脂質で、どちらの細胞膜の極めて重要な原料そのものだ。膜の修復がうまく進まなくなり、毛間内皮細胞が剥がれ、動脈硬化が進む。

LDLにはもう一つ、極めて重要なものが含まれている。脂溶性ビタミンだ。ビタミンD、あるいはビタミンC以外の抗酸化ビタミンの大部分、これほど大切なものが血管壁に十分供給されないとなると、きっと大変なことになる。

一般の高コレステロール血症はいろいろな機序で起こるが、家族性高コレステロール血症、あるいはその関連のLDL粒子が細胞に取り込まれにくくなる疾患とは、成り立ちがまったく違う。少なくとも、高コレステロールになっても血管壁にはほとんど関係しない。