乱用されやすい市販薬

月刊保団連 2026年5月号より 松本 俊彦先生

乱用されている市販薬の多くは、鎮咳薬と感冒薬、なかでもエスエスブロン錠とパブロンゴールドA錠が多い。これらの製品には、気管支拡張作用のあるメチルエフェドリンもしくはブソイドエフェドリン(覚醒剤原料)と、脳の咳中枢を抑えるデヒドロコデイン(オピオイド成分)が含まれている。前者には、意欲を高める作用があり、後者には、不安や恐怖、激しい感情を和らげる作用がある。
現在は、いずれの製品も、乱用に一定の歯止めをかけるべく、2014年以降、「一店舗の販売は一人1箱」といった制限がなされている。しかしその結果、近年では「コンタック配合風邪薬」(以下コンタック)、「メジコン咳止め錠PRO」(以下メジコン)、「レスタミンコーワ錠」(以下レスタミン)といった、これまでは販売個数制限対象となっていなかった別の市販薬製品が乱用されるようになった(2026年5月以降、販売個数制限となる予定)。

コンタックとメジコンには、鎮咳成分デキストロメトロルファンが、レスタミンには抗ヒスタミン作用薬成分ジフェンヒドラミンが含まれている。これらの成分は、他の薬剤との相互作用で急激に血中濃度が上昇しやすく、比較的容易に中毒量に達してしまう。その結果、デキストロメトロルファン中毒では房室ブロックによる心停止が生じ得る。特にデキストロメトルファンの場合、グレープフルール飲料と同時摂取すると、柑橘系果汁に含まれるフラノクマリン類が、肝臓のチトクローム系酵素を長時間阻害するために血中濃度の急激な上昇を呈しやすく、致死的な事故となりやすい。

要するに、オーバードーズとは自傷と自殺の中間に位置する行動なのだ。

若者たちが市販薬にアクセスしやすくなった背景として、規制緩和によりドラッグストアが急激に増加し、ネット販売も可能となったことが挙げられる。さらに政府のセルフメディケーション推進により医師の処方箋なしでアクセスできる医薬品が増やされ、現在、OTC類似薬に特別料金を設定することが検討されているが(2026年4月現在)、このままやみくもにセルフメディケーションを進めれば、市販薬の乱用に拍車をかけることにもなりかねない。