テストステロン値の加齢による変化・・・年齢よりも併存疾患・生活習慣(病)が、よりテストステロンの低下に影響を与える
日本医師会雑誌 2024年12月号より
男性更年期障害の症状および徴候
①リビドーと勃起能の質と頻度、とりわけ夜間就寝時勃起の減退
②知的活動、認知力、見当識の低下および疲労感、抑うつ、短期などに伴う気分変調
③睡眠障害
④筋容量と筋力低下による除脂肪体重の減少
⑤内臓脂肪の増加
⑥体毛と皮膚の変化
⑦骨減少症と骨粗しょう症に伴う骨塩量の低下と骨折のリスク増加
テストステロンは20歳台でピークを迎え、50歳以降は年に1%ずつ低下すると報告されている。
総テストステロンは加齢に伴い緩やかな変化しか示さないのに対し、遊離テストステロンは加齢に伴い有意に低下していく。しかし、この遊離テストステロンの低下は、テストステロン産生自体の低下を示すものではなく、結合蛋白であるSHBGが加齢に伴い上昇が生ずるためである。(女性においては加齢に伴うSHBGの増加は認めないため、遊離テストステロンは減少せず、若干の増加をしめす。)
加齢に伴うテストステロン低下の原因として、ライディッヒ細胞の減少や機能低下、間脳ー下垂体ー精巣系の機能低下が考えられてきた。しかしながら、現在ではこのうような性腺の器質的変化に加え、併存する生活習慣病や肥満による機能的テストステロン低下が主体であるとの概念が主流となっている。肥満によりテストステロンは脂肪組織でエストロゲンに変換され、併存疾患や肥満などの生活習慣による慢性炎症によるサイトカイン放出や肥満によるアディポサイトカインやエストラジオールの上昇が間脳ー下垂体ー精巣系の抑制を来す。
つまり、年齢よりも併存疾患・生活習慣(病)が、よりテストステロンの低下に影響を与えるとのエビデンスが明らかにされてきている。これは、生活習慣(病)の改善がテストステロン低下の予防にもつながり、治療においても重要な概念である。
コメント:テストステロン値は生命予後にも関係するといわれている。