爪が白い・・・セレン欠乏症?

 

80代女性。爪の色が白い。

セレン欠乏を疑い、血清セレン値を測定。 10.8μg/dl 正常(10.6-17.4)

値はぎりぎり正常だけれども、セレン補充で改善すれば、セレン欠乏症といってよさそうだ。

低セレン血症を知っていただくために筑波大学 医学医療系 小児外科 教授増本 幸二 先生監修より引用

表2. セレン欠乏症の診断基準
1. 下記の症状/検査所見のうち1項目以上を満たす
A : セレン欠乏による爪の白色化
B : セレン投与により改善
2. 上記症状の原因となる他の疾患が否定される
3. 血清セレン濃度
4. セレンを補充することにより症状が改善する
Definite(確定診断):上記項目の1、2、3、4をすべて満たすもの。
Probable:セレン補充前に1、2、3を満たすもの。セレン補充治療の適応となる。
19歳以下では10以下

 はじめに
“低セレン血症”は必須微量元素の1つであるセレンが生体内で欠乏した状態であり、血清セ
レン濃度を測定することにより診断されます。低セレン血症が原因で生じる“セレン欠乏症”の
症状としては、爪の白色化や変形、筋肉痛、筋力低下、不整脈や頻脈を引き起こす心筋障害など
が知られています。これらの症状の中でも、セレン欠乏による心筋障害に伴う心不全は死に
至る可能性があることから、早期に低セレン血症を診断し治療することが重要とされています。
しかしながら、低セレン血症はほとんどの場合に臨床症状が見られないため、積極的に血清
セレン濃度を測定しなければ発見が難しいとされています。
1979年に中心静脈栄養施行時に発症したセレン欠乏症が海外において初めて報告された
のち、国内でもセレン欠乏症症例が報告され、セレン補充の重要性が注目されるようになりま
した。しかし、当初は国内において、セレン欠乏症の予防や治療の標準化には至らず、セレン
濃度測定の保険適用やセレン製剤が承認されていなかったことから診療は困難な状態で
した。このような現状から診療指針策定の要望が多く、2015年に日本臨床栄養学会ミネラル
栄養部会より「セレン欠乏症の診療指針」が報告され、その後2016年にはセレン濃度測定が
保険適用※となり、2019年3月、国内初の低セレン血症治療剤が承認されました。このように
低セレン血症の診療における環境は、近年大きく進歩しております。