天国での申し開き

「研修医になったら必ず読んでください。 診療の基本と必須手技、臨床的思考法からプレゼン術まで」羊土社より

 どんな仕事でも失敗したことがない人はいないだろう。また仕事以外でも失敗は日常茶飯事だろう。人を怒らせたり、心を傷つけたり、不愉快にさせたり、無知無能をさらして恥をかいたりする。皆ある程度お互い様で許しあって生きていると思う。

 しかしこと医療行為に関しては”失敗は許されない”ことになっている。大きな失敗は何十年も言い伝えられる。(特に地元密着の開業医では)

 恐ろしすぎて、失敗を認めることはできない状況になってしまう。

 10年臨床現場に立って、心の底に思い続ける患者さんがいない医者はいないだろう。天国に行ったときに、「あの時はすみませんでした。あなたのことを忘れずにずっと仕事を続けたんですよ。許してつかあさい(許してください)。」と伝えるのだ。
 医療関係者は”後悔しながら生き続けなければならない”。

以下 岡田正人先生のコラムより

 ケビン・コスナー主演のThe Guardianという映画を見たことがあるでしょうか。彼は、伝説的な海難救助士でしたが、引退して教官になったときに「何人の人を救ったのか」と聞かれ、「数十人」という少ない数字を言います。何百人という答えを予想していた生徒が驚いていると、彼は一人ひとりの名前を読み上げます。彼は、「これが私が救えなかった人だ。救った人は覚えていないが救えなかった人は決して忘れない」と言います。