面白かった本・・・水力発電が日本を救う

水力発電が日本を救うー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる
竹村 公太郎
東洋経済新報社
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 内容は以下のレビューでざっとわかります。
 専門外で評価できませんが、魅力的でした。
 小学生に小さなリサイクルや節電など教えるのは(もっともらしい良識論)、偽善だと思いますし、思考停止に陥らせる可能性があると思います。

なんとしても実現してほしい提言。「今尊徳」と勝手に呼ばせてもらいます。

「雨は日本にとっての『油田』だ」という指摘、なんてすばらしい。
素人のわたしにも、ストンと胸におちる提言が満載です。国会議員たちにとどいているのかなあ。
自分のアタマの良さをひけらかす空理空論も、「ダム屋」の我田に水を引くという私欲もない。
エネルギー問題についてはこういう解決策がありますという、実務的な、実行可能な提言だけが書かれています。
竹村によれば巨大ダムは自然の岩盤と一体化した構築物で、ほぼ永久的に壊れないように作られている。このダムを10%かさ上げし、能力フル活用と法律を改めれば、発電量は2倍になるという。加えて、治水目的のためだけに作られたダムに発電もさせる、小型水力発電をいたるところに作るなどのアイデアを駆使すれば、日本のエネルギー問題は解決できる。制御できない原発に頼る必要もなくなる。
実務の人・竹村の真骨頂は、自分のアイデアを実現する法整備、ビジネスモデル、リスク管理、コスト管理まで、徹底的につきつめた提言になっていることです。ダム屋として三つもの巨大ダムを責任者として作り上げた経験から、「小水力発電の利益は水源地域に属する」という原理が提言されます。目のさめるような提言です。

法律の縛りで、ダムの持つ能力を縛られていて、実に馬鹿馬鹿しい運用をさせられている事が分かる本です。
太陽光や風力などの不安定な自然エネルギーに走る前に、体積あたりの質量は、風より水のほうが大きいし、既にある物なのだから、十分に活用することが先ではないでしょうか。
もちろん、平行してやる事は構わないけれど、水力(ダムだけに限定せず)をもう一度見直す必要が有ると思います。

1 文章がわかりやすい。短文、短段落、言い切り。文章作成のお手本だ。
2 内容が具体的。「環境を守ろう」「資源を大切にしよう」というような、共感を求めるだけの抽象論・方向性論は皆無。「河川法の目的に一文加えたらよい」という知見にはうなずいた。
3 著者の仕事ぶりに感動。特に宮ヶ瀬ダムの観光地化戦略はドキュメンタリー化希望。
4 小水力発電を推進するための方法論が述べられている。具体的な数値や各種機構の設置趣旨からもわかるように著者は実務のプロだ。

「総合的な学習の時間」にもっともらしい良識論を唱えるくらいならこの一冊を教科書的に扱う方が賢いだろう。