統合失調症 ケースレポート Discussion

ORTHOMOLECULAR TREATMENT OF CHRNOIC DISEASEより

この27症例は、沢山の症例からランダムにピックアップしたものではない。以下のクライテリアで選んだ。1)少なくとも10年間の治療を受けたもの 2)(2,3の例外はあるが)平均してビタミン療法開始までに7年程度経っている者(平均年齢は40歳) 3)以前に受けた治療に反応しなかったもの。この27名のうち、1名の治療を継続しなかった者を除くと、11名は働いていて、2名は結婚して家族の面倒をみていて、2名はシングルマザーで子どもの面倒をみていて、3名は自分で事業を行っている。

 

1977-78年から1991-92年まで、平均診察回数は着実に低下している。最初の2年間は平均で9.6回の受診回数が、終わり頃には平均年4回程度になっている。私は、受診回数を患者の状態評価に使うクライテリアにしている。状態が悪いほど頻回に受診するものだ。患者が改善しはじめたら、私は患者に訊ねる。次の受診は1ヶ月後にしますか?2ヶ月後?3ヶ月後?それとも受診したくなったとき?受診間隔は患者と一緒に決めている。患者さんは必要を感じたときに予約のセットアップができることを告げられる。グループホームの看護師は(ホームへ入所中の患者について)いつ受診するべきか判断する。慢性期の患者でトランキライザーを内服している患者は少なくとも年に1、2度は薬の副作用や状態評価のため診察をするべきと考える。40年以上の経験からいえることは、患者さんは医師とコンタクトをとっている方が内服を継続してくれるものである。したがって、状態がよくても2年間で4回程度の受診継続が必要なのである。

 

慢性の患者はとてもゆっくりと治療に反応する。症例群でもフォローアップの最初半分の間は少しの変化しか認めていない。5から7年間もの時間の中でゆっくりと着実に改善する。このことにより、新しく改良されたトランキライザーの使用をすすめるものではない。新しいトランキライザーには、ゆっくりと改善させる作用がない。しかし、新しいトランキライザーと栄養療法を組み合わせるとより改善しやすいかもしれない。もう1つのファクターは抗うつ薬、とりわけclomipramine(Anafranil)である。これはパラノイド的症状を減らすのに効果がある。私は繰り返すパラノイド的考えは強迫障害に近いと考えている。私は元気なパラノイド症患者をみたことがない。抑うつを取り除くことの方が簡単である。

 

治療の反応がゆっくりしたものであることは不利な点である。多くの医師はそれほど長期の治療に取り組まない。また精神病院を退院した患者は、同じ主治医にフォローアップされない。私の意見としては、フォローアップする医師は、栄養と薬物調節ができなければならない。

 

この慢性病の症例群には疑いようなく、バイアスがかかっている。これほど長く栄養療法を継続できているのだ。一般に、これほど長期継続できるものではないのだ。オーソモレキュラー療法では、サプリメントのコンプライアンスも薬物の量も、サプリメントを中止するインセンティブもあまり問題とならないと思う。

これらのパラメーターを一般化することはできない。実際に、慢性期の患者で治療を何年も継続したものは改善している。栄養治療による回復の機会を奪うことは無責任である。ダブルブラインドテストの信奉者はこの結果が二重盲検定ではないため却下するだろう。このような治療はダブルブラインドテストは無理なのである。長期間プラセボを内服させることは、物理的にも倫理的にも不可能である。二重盲検定を求める者は、これを栄養療法にたいする武器として使っている。もちろん私のデータに反証する方法はある。懐疑的な精神科医はトランキライザーのみで、同様に改善した症例を述べることができる。私もそのような症例提示群を見てみたい。最初にトランキライザーが導入された1955年以来、私は薬物療法のみでこのような改善をみたことがないのである。

 

最近、Waring, Lefcoe, Carverらは34人の発症早期の統合失調症患者のレポートを出した。これらの患者は1度のエピソードか入院歴があり、急性期(早期)と診断された者である。彼らによると、最も予後因子の良いグループ(家族歴がなく、1度のエピソードのみ)であった。患者らは5年間フォローアップされた。60%が家で生活し、82%がフォローアップ継続された。半数は抗精神病薬の内服中で、薬を飲んでいないのは1名だけであった。発症時職についていたうちの45%はまだ仕事を継続してたが、多くの場合はパートタイムの働き方になっていた。

このように、最も予後良好と思われ、最も専門的治療をうけ、両親のサポートに恵まれた患者群ですら、40% 程度しか仕事ができていない。(パートタイムも含めて)このような患者群の場合、オーソモレキュラー療法であれば、2年間で少なくとも90%が全快する。このレポートの患者群は、慢性期状態の私の報告よりも治療成績が劣っている。初期の患者なら5年ものあいだに回復してしかるべきであるが、私が示したとおり、トランキライザー単独では無理なのである。筆者らはこのような言葉でしめくくっている。

”Only time will tell whether this cohort is able to work and love in their adult years.”