クリニカルパール 医学は進歩するが、医者は進歩しない

総合診療 2018年10月号より

デビッド・サケット

受動的な懐疑主義から能動的な探求へ 
②いやいやながらの疫学が道を開く
③やりたいことだけやるな。やりたくないこともやれ。その中から意外な道が開けてくる
④医者は都合のいいように言い訳(解釈)する
⑤医者は自然に治る病気に無駄な治療をして治したと言い、致死的な疾患に有害なことをして最善を尽くしたという

④・・・・2009年サケット先生はカナダの医学賞Gairdner-Wightman Awardを受賞した。そのときの講演記録が残っている。それは、以下の衝撃的なフレーズから始まる。
“George Washington died from docotors(ジョージ・ワシントンは医者に殺された)”というのである。
初代アメリカ大統領であるジョージ・ワシントンは、喉頭蓋炎で死んだのだが、実際は、当時の喉頭蓋炎の最新の治療であった「瀉血」による出血性ショックで死んだことが明らかになっている。

10年後、イギリスの医者が、「瀉血」により死亡率が10倍になることを示した。

しかし、その出来事から83年後になってなお、かの有名なウィリアム・オスラー先生も、その研究を引用して、「瀉血量が少なすぎた」という批判をしたのだ。どうしてそのようなことが起こるのか?
サケット先生は、以下の4点を指摘する。
・致死的な病気は、致死的な治療の追加によって死んでしまっても、追加した治療が有害であるということがわからない。
・自然に回復するような病気は、どんな治療を行っても、有効と判断される。
・治療を受け入れる患者は、治療を拒否する患者より、もともと死亡率が低い。
・ジョージ・ワシントンに提供されたような洗練された専門医の治療は、実際の効果よりも大きめに見積もられることが多い。