アメリカの分裂

文芸春秋 7月号 日本は核を持つべきだ エマニュエル・トッド より

大統領選で敗北しましたが、ヒラリークリントンが代表していたのは、「帝国としてのアメリカ」「グローバリズムのアメリカ」「自由貿易のアメリカ」でした。トランプの方は、「孤立主義のアメリカ」「アメリカ・ファースト」「保護貿易のアメリカ」でした。二人の主張は、激しく対立していますが、いわば同じアメリカ・ナショナリズムの2つのバージョンと考えることもできます。

この2つのバージョンは、言い換えれば、エリート主義とポピュリズムで、国内では融合できなくとも、外に向って攻撃的に出て行く際には融合できる。これは、「前方へ向っての逃亡」というか、前へ走ることによって眼前の問題を解消するような振る舞いで、恣意的で冒険的な外交政策が、「二つのアメリカ」という分裂を解消するソリューションになってしまっているのです。これによって内部対立を緩和できる米国はいいかもしれませんが、同盟国や世界にとっては厄災でしかありません。