実地医家が知っておくべき臨床栄養学・・・慢性腎臓病 その3(亜鉛とセレンの欠乏)

日本臨床内科学会誌 2023年6月号より

脇野 修先生(徳島大学腎臓内科)

腎不全患者、透析患者では微量ミネラルの欠乏、過剰が知られている。腎臓からの排泄がその代謝において重要な微量元素においては体内への蓄積が危惧される。コバルト、Ni, バナジウム、ストロンチウム、カドミウムは上昇している。その一方で注意すべきなのは欠乏症となる元素があり、亜鉛とセレンがその代表である。

慢性腎不全、透析患者における亜鉛欠乏の原因は、1.透析による除去、2.食事制限 3.低蛋白血症 4.小腸での吸収の低下 5.酸化ストレスの亢進に伴う消費の亢進 6.吸着薬、イオン交換樹脂による吸着が指摘されている。末期腎不全、透析患者における亜鉛欠乏の頻度は高い。この亜鉛の補充に関しては、禁煙透析患者におけるメタアナリシスが報告されている。亜鉛の補充で、食事量や蛋白摂取量の増加、血性アルブミンの増加、炎症の改善、参加ストレスマーカーの改善が認められている。

高齢者は食事摂取自体が低いので、腎不全を理由に蛋白制限するとむしろ欠乏状態になると考えられる

 

セレンも生命の維持にとって重要な微量元素である。その機能は、1.免疫機構の促進でとくに細胞性免疫を維持すること。2.癌の抑制効果。3.抗酸化酵素の代表であるグルタチオンペルオキシダーゼの構成因子となり抗酸化作用を有すること。4.甲状腺ホルモン合成、分解にかかわることである。