PPIと慢性腎臓病

日本内科学会雑誌 2023年1月号より

今田 恒夫先生(山形大学大学院公衆衛生学講座)

以下引用

PPIと慢性腎臓病の関連についても同様に、多くの症例対象研究やコホート研究が行われている。

上記のすべての症例対象研究とコホート研究でPPIと慢性腎臓病発症との間に有意な関連を認めている。それらの結果を統合したメタ分析でもPPIと慢性腎臓病の関連リスク比1.36(95%信頼区間1.07-1.72)~1.35(95%CI1.15-1.56)と有意なリスク上昇が報告されている。また、PPI投与期間が長いほど、慢性腎臓病発症リスクが上昇することも報告されている。

PPIによる腎障害について想定される機序
PPIが急性腎障害を引き起こす機序はまだ確立されていないが、いくつかの機序が想定されている。第一に、多くの薬剤と同様に急性間質性腎炎を起こすことが考えられる。急性間質性腎炎は軽度であれば臨床上気づかれることもなく軽快することもあるが、中には炎症が進展し、急性または慢性の腎障害に移行することがある。急性間質性腎炎以外にも、PPIが低マグネシウム血症を起こし尿細管障害を惹起する。PPIの関連が報告されている膠原繊維性大腸炎によって慢性下痢が起こり脱水傾向となることが急性腎障害や慢性腎臓病の発症に関与する。腸内細菌叢の変化が腎機能に影響する、などの可能性が報告されている。