心・腎保護を考慮した2型糖尿病治療
オンラインの勉強会 メモ
①一般的に、糖尿病では糸球体が障害され、腎硬化症では間質が障害(尿アルブミンが出ないタイプ)される。DKD(糖尿病性腎臓病)では両者が障害される。
②SGLT阻害薬(尿へ糖を出す薬)の腎臓・心臓への効果は、血糖を下げるメカニズムのみによるわけでない。
③SGLT阻害薬(尿へ糖を出す薬)は糸球体内圧を低下させ糸球体過剰ろ過(濾過装置の働きすぎ)を抑制する。
④SGLT阻害薬(尿へ糖を出す薬)は近位尿細管からのナトリウム吸収を抑制させる。
⑤SGLT阻害薬(尿へ糖を出す薬)はナトリウム吸収の抑制および、尿への浸透圧増加(糖分排出)により、利尿効果をもたらす。
⑥SGLT阻害薬(尿へ糖を出す薬)はベータヒドロキシ酪酸(ケトン体)を増加させる。これはミトコンドリア機能(特に尿細管にはミトコンドリアが多い)の改善と、抗酸化ストレス作用をもたらす。
⑦SGLT阻害薬(尿へ糖を出す薬)はヘモグロビンとヘマトクリット値を改善する。すなわち貧血が良くなる。これは利尿による血液濃縮だけでなく、エリスポエチン再生細胞を回復させるためと考えられている。(腎低酸素症の改善)
⑧SGLT阻害薬の副作用として、ケトアシドーシスと尿路感染症に注意が必要。
⑨SGLT阻害薬は、やせ気味の高齢者には使いにくい。
➉交感神経の興奮を低下させる。
コメント:
①糖質制限においても、尿細管でのナトリウム再吸収が低下し、水分とナトリウムが尿中へ排泄される。
②糖質制限においても、アルブミン尿の減少がみられる。
③糖質制限においても、血圧低下が認められる。
④糖質制限において血中のケトン体値が上昇する。
⑤糖質制限食は、SGLT阻害薬+カロリー制限と比較して、血糖スパイク解消の有利さがある。
⑥糖質制限において、中性脂肪値の低下は顕著
6月で88歳になられるリチャード・K・バーンスタイン医師の考えは、”血糖値を低下させることが最も重要”のようです。
以下引用
糸球体過剰ろ過について
糸球体ろ過率(GFR)は、一定の期間に腎臓がろ過できる量の指標である。頻繁に高血糖になるが正常腎臓である糖尿病患者の多くは、最初GFRが非常に高い。その理由の一部は、血糖が周囲の組織から水を血流中に引き込んで、その結果、血液量増加、血圧上昇、および腎血流量が起きるためである。高血糖の糖尿病患者で腎臓の永久的な障害が起きる前には、GFRが正常の1.5ないし2倍のとなこともまれではない。こういう人達は、典型的な場合、5ないし50包分の重量に相当する糖を24時間の尿の中に出すであろう。イタリアのある実験によると、血糖値が80mg/dlから272mg/dlへ増加した結果、十分に機能していない腎臓の糖尿病患者でも平均GFRが40%増加した。タンパク質の糖化や、その他のブドウ糖の血管に対する中毒効果などが判明する前は、糖尿病腎症の原因はこの過剰なろ過作用にあると推測された。
糖尿病性腎症発症のシナリオ
タンパク質の糖化、血液凝固因子異常、血小板異常、糖化蛋白に対する抗体、その他が一緒になって糸球体毛細管を障害するというものであった。初期の障害は単に毛細管小孔の電荷を減らすだけかもしれない。その結果、マイナスに荷電したタンパク、たとえばアルブミンが孔を通過して尿中に現れる。糖化蛋白は正常蛋白よりもはるかに早期に孔を通過する。光高血圧、そして特に高インスリン値はGFRを高め、孔から漏出する蛋白の量が増える可能性がある。これらのタンパクのいくばくかが糖化されている場合は、これらが毛細管の間にあるメサンギウムという組織に付着する。糖尿病の糸球体を調べると、実際、毛細管やメサンギウムの壁に糖化蛋白と抗糖化蛋白抗体の大きな塊の沈着を示す。これらの沈着物が増えると、メサンギウムは毛細管を圧迫して毛細管の圧力を上げ(孔を拡大する)。分子量の大きい蛋白も漏れるようになる。これらはさらにメサンギウムを肥厚し、さらに毛細管を圧迫し、破壊を促進する。最終的にメサンギウムと毛細管は瘢痕組織の塊になる。これとは別に、高血糖と糖化タンパクはメサンギウム細胞にⅣ型コラーゲンをつくらせる。Ⅳ型コラーゲンは繊維物質でメサンギウムをさらにかさばらせる。メサンギウムの容量増加は、コントロールが不十分な糖尿病の尿中にアルブミンその他のタンパク質が出現する以前にすでに認められている。
ヒトにおける多くの研究は、血糖値が改善するとGFRも改善し、尿中タンパクの漏出も減ることを示している。