傷は石鹸で洗った方がよいのか?

熱傷を石鹸で洗浄するドクターや、床ずれを石鹸で洗う看護師さんを見かけます。

とても痛いので、やめた方がよいと思います。痛い、ということは、傷が深くなっているということでしょう。

以下、夏井先生の「新しい創傷治療」より

主治医から傷を石鹸でよく洗うように指導されましたが,石鹸で洗わないといけないのでしょうか?
 この質問にかぎらず,「傷口は石鹸をつけてよく洗うように」と指導する医者が多いようですが,もちろん,何の根拠もありません・・・というか,洗うべきではありません。傷は石鹸で洗わないほうがいいです。
 石鹸は界面活性剤そのものであり,細胞膜(=脂質二重膜)を直接破壊します。だから,傷口(=細胞がむき出しと考えられる)を石けんで洗うと傷口の細胞は破壊されます。石鹸で傷を洗うと痛いのはこのためでしょう。
 創面の細菌を除去するためなら水で洗えば細菌は除去できます。何も界面活性剤を使用する必要はありません。石鹸が必要なのは「傷口が油で汚れている」状態だけです。つまり,傷口が機械油で汚れているとか,傷口がラー油まみれの場合だけです。これらの状態であれば「傷を石鹸で洗う」必要がありますが,それ以外では石鹸洗浄は不要です。
 「石鹸で傷を洗うように」と指導する医者は科学の基礎がわかっていないと思われます。