視神経炎と多発性硬化症とアクアポーリン4抗体

ドクターサロン2025年5月号より

従来、白人社会では、多発性硬化症が指神経炎の主な原因でしがた、今世紀に入ったあたりから、どうもアジア人は白人でみられたような臨床経過や治療の反応とは違って、予後が悪い例が多いことがわかってきました。
いろいろしらべていきますと、視神経の鞘ではなく、視神経の中の電線そのものに対して、自己抗体ができてくることが、特に日本人を含めたアジア人に多いことがわかってきました。
その代表的なものがアクアポリン4抗体です。アクアポリンというのは水チャンネルで、水分子を通過させるものですが、それに対する自己抗体ができてくる。アクアポリンとは、視神経の中の電線を取巻くグリア細胞という、視神経に栄養を与えるなど直接支持している細胞で、それがアクアポリン4をたくさん発現している。そのアクアポリン4に対して抗体ができてしまうというパターンです。
もう一つ有名なのは、グリア細胞も2つに分かれまして、今言いましたのは、グリア細胞の中のアストロサイトと呼ばれる細胞ですが、もう一つ、オリゴデンドロサイトというものがあります。難しい名前ですが、このグリア細胞に対する一種の構成成分への抗体ができる。これがミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白、通常、略してMOGといいますが、MOGに対する抗体ができる。その結果、オリゴデンドロサイトというグリア細胞が障害されてしまうという2つのパターンがあります。

アクアポリン4抗体があるケースは、ステロイドパルスが効きにくく、血漿交換や免疫グロブリン大量療法などが必要となることがある。