新型コロナ肺炎について

ドクターサロン 2025年5月号より引用

重症化の機序
サイトカインストームと呼ばれるような過剰な炎症反応が臓器障害を促進すると、多臓器不全により病態が悪化するという機序があったと思います。
こうした全身性の炎症反応は、呼吸器の臓器ではARDSと呼ばれるような急性呼吸促拍症候群に進展し、酸素の換気が著しく低下することが病態として考えられています。また、そういった炎症性の変化が血管内皮細胞の損傷、そして血管透過性の亢進といった病態に伴って、血栓症、脳梗塞、凝固障害などの問題につながるようなことも、典型的にはおこっているだろうと思います。

ステロイドは最初に治療薬として確立した新型コロナウイルス感染症の治療の典型です。特に、デキサメタゾンがイギリスの研究で用いられたことで、一般的に使用されるようになりました。リカバリーという試験です。作用機序としては、炎症を抑える抗炎症作用によって過剰な炎症反応やサイトカインストームを抑制し、臓器障害を軽減して、血管透過性の亢進を抑制することで肺水腫などの合併症のリスクを低減すると考えられます。
ただ、適用が中等度Ⅱといわれている酸素需要を必要とする病態以上の患者さんで使うことが重要で、酸素需要のないような軽症の患者さんに使用すると、かえって予後が悪化するというデータも出ている治療法です。
また、ステロイドは、コロナウイスる感染の後に生じ得る器質化肺炎のような病態では、少しその用量や治療期間が変わってくると思いますが、典型的にはデキサメタゾン6㎎(プレドニン換算25.5mg)を7-10日間程度使用するのが一般的です。(他にIL6受容体拮抗薬やJAK阻害薬も治療適応がある。)

コメント
・比較的軽症の患者さんでもステロイドを積極的に使用する、という考えも聞いたことがある。

・感冒後にサイトカインストームによる重症肺炎になるケースはコロナ以前からあった。それゆえ、コロナの治療にステロイドが有効であろうことは予測できていた。

・コロナウイルス感染後の器質化肺炎の患者さんを経験した。(88歳男性)