葉酸(ビタミンB9)の発見

ビタミン発見物語 笠原 浩 著  月間保団連 2019年7月号より

葉酸は、一般臨床では悪性貧血(大球性貧血)の原因として検索されることがある。また、葉酸代謝拮抗薬(メソトレキセート)のレスキューに用いられる。メソトレキセートは関節リウマチで第1選択で用いられる他、悪性リンパ腫等の腫瘍性疾患に大量に用いられる。関節リウマチで、栄養療法とメソトレキセートを併用する場合、ビタミンBコンプレックスには葉酸が含まれ、メソトレキセートの効果を減弱させるので注意が必要だろう。

葉酸の欠乏はビタミンB12欠乏と同様に、DNA合成障害を引き起こす。

 

以下引用

1928年、イギリスの病理学者ルーシー・ウィルズはインドの女性労働者の間で妊娠中に多発する重度の貧血症を調査する為、現地に派遣された。彼女はこれが悪性貧血とは異なる貧血症であると考え、感染症ではなく、栄養因子の欠乏症であると考え、さまざまな食品でその改善をこころみて、肝臓エキスや酵母成分が有効であることを見出した。そして、」レバーよりはずっと安価なマーマイト(ビールの絞り粕=酵母を主原料とした黒色ペースト状の食品)を食事に加えることで、この病気を見事に一掃した。

1935年には、P・L・デイらがサルを人口飼料で飼育すると貧血、白血球減少、下痢などの症状を呈したが、肝臓エキスや酵母成分で治癒することを報告した。

1941年になると、テキサス大学のエスモンド・E・スネルらがホウレンソウから分離した物質が、この有効成分であることが明らかになり、レダリー製薬のストックスタッドによって構造決定がなされた。化学名はプテロイルグルタミン酸で、これもビタミンB複合体に属する水溶性ビタミンであったので、当初はビタミンB9とも呼ばれたが、葉物野菜に多く含まれていることから「葉酸=follic acid」が一般名となった。現代でも、アルコール依存症ではときに欠乏症が見られることがあり、

妊娠女性では貧血や胎児の先天障害の原因になりうる。

わが国の厚生労働省は妊娠を計画している女性に0.4mg/日以上の摂取を推奨している。これは、葉酸が新生細胞の増殖を促進すると考えられるので、その裏返しとしては、メトトレキサートなど葉酸拮抗剤が白血病などの悪性腫瘍の治療に使われている。

 

インド人の妊婦は、緑黄色野菜や果物を欠く制限された食事を摂っていたそうである
厚生労働省は2000年から、妊婦に対する葉酸の摂取を推奨している。
(欧米の婦人科医は妊娠が判明した時から、鉄、葉酸、ビタミンBコンプレックス、ビタミンDを勧めることが多いよう。)

 

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