現在の医療の常識は30年後の非常識

ドクターサロン 2026年5月号より

①慢性胃炎について(上村直実先生)

最初はピロリ菌が胃潰瘍や十二指腸潰瘍さらに胃癌と関係があるとはまったく信じていませんでした。私は広島大学の第一内科出身ですが、潰瘍に関しては胃酸分泌が最も影響すると教わっていました。

私は1987年‐89年にかけてアメリカに留学していましたが、向こうの医師に当時の名称であるカンピロバクターを「知っているか」と聞かれて、まったく知らないと答えたのを記憶しています。

②肝炎・肝硬変について(小俣政男先生)

半世紀以上前に医師になったのですが、その頃の肝臓病額は代謝性疾患という感じで、間違っても感染症とは思っていなかったと思います。1965年にB型肝炎が、1989年にC型肝炎が発見され、日本の7‐8割の肝臓病が感染症だと判明しました。

③胆石症について(伊佐山 浩通先生)

昔は胆石があるだけで手術という治療方針がありましたが、現在は症状がない方は経過観察が標準です。手術のメリットとしては、胆嚢癌の発生を未然に防ぐというような話もありましたが、現在の胆石症ガイドラインでも胆のう結石がある方に胆嚢がんが高率に発症するというエビデンスはないということが明記されており、そういった観点からも無症状の胆石を手術するということはなくなってきました。

④慢性膵炎について(下瀬川 徹先生)

我々学生の頃は、慢性膵炎というと、胆石症とイコールで、膵臓が異常に硬くなって、膵実質とよばれる部分が荒廃し、外分泌不全や内分泌不全を起こして、膵菅が拡張して中に石が詰まっている。そういったものが慢性膵炎という概念でとらえられていたと思いますが、今から10年ほど前にこの疾患概念が大きくわかりました。これは慢性膵炎が起こる機序がだいたいわかってきて、機序を含めた概念に変えようということで、ピッツバーグ大学のDavud Wgutcinb先生という有名な医師がいるのですが、私も参加して、この疾患概念を作りました。それによると、慢性膵炎というのはもともと遺伝的な素因や環境因子など危険因子を持った人が、その方の膵臓にいろいろな障害やストレスが加わると、持続的な反応を起こして、線維化や炎症が生じる特殊な状況、すなわち病的な線維化症候群という捉え方をするようになっています。

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飲酒が一番大きな原因であることは今も変わりはありません。それも後天的な因子、大事な危険因子になるのですけれども、そのほかに喫煙や、先ほどいいましたような様々な膵炎の遺伝子が分かってきました。