負けてめざめることが最上の道だ。

奥中 正之さんのFB投稿より引用

吉田満著「戦艦大和ノ最期」(講談社)を読みて;
燃料は往路分だけを積載し、沖縄戦陸軍による反攻作戦を支援するため決死の出撃をした戦艦大和の悲劇は周知の通りである。
今これを読むのは、歴史にIFを求めるのではなく、中国との戦争の危機に直面する私たちへの教訓を得るためであった。
呉港を出港した大和の艦内で、死に直面した兵学校出身の将校たちと学徒出身の士官たちは死の意義について激論を交わしている。前者の士官たちは「国のため、君のために死ぬ、それでいいじゃないか」と主張する。後者の士官たちは「君国のために散る、それは分かる、だが一体それはどうゆうこととつながっていのだ。俺の死、また日本全体の敗北、これら一切のことは、一体何のためにあるのだ」と主張する。両者の議論はかみ合わず乱闘に至る。しかし哨戒長臼淵大尉の「負けてめざめることが最上の道だ。敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか。今めざめずしていつ救われるのか。俺たちはその先導になるのだ。日本の新生にさきがけて散る。まさに本望じゃないか」との主張に一同納得して上記激論の収拾に成功したと記されている。
死に直面して彼らが悟った結論が今日危機に直面する我が国・私たちに生かされているのか?私は忸怩たる思いである。
大東亜戦争は勝利の確信もなくアメリカに戦いを挑んだ。現在万一中国と戦火を交えることとなった場合、私たちは必勝を確信出来るのか?甚だ疑問である。
アメリカ世論の90%以上は戦争に反対であつた。その世論を有効に利用することなく、乾坤一擲真珠湾攻撃をせざるを得ない立場にいたった。
現在対中戦争に絶対勝てる自信が持てない状況ならば、戦争を回避にする努力が私たちの最善の選択であろうと考える。中国は独裁政治体制であり、国民世論を私達が操作することは出来ない。さすれば軍事力を核心とする力を背景とする抑止力の構築しかないと考える。
戦艦大和の士官たちの悲願を生かして、対中戦争の回避に全力を傾注したいものである。以上奥中
【補遺】吉田満氏は大正12年1月生れ、昭和18年12月東大法学部在学中学徒出陣により海軍に入り、昭和20年4月少尉、副電測士として戦艦大和に乗り組み、沖縄特攻作戦に参加。乗員3,332人、生存者276人中の一人として奇跡的に生還、昭和54年死去。「戦艦大和ノ最期」は吉田氏の実体験をもとに書かれた記録である。以上