糖尿病性腎症とタンパク質

ダイエットのタンパク質の代謝によって尿素、アンモニアなど窒素を含む老廃物が作られる。したがってこれらの老廃物を血液から浄化するためには大量のタンパク質を摂っている人たちはGFRが上昇しているのではないかとそれまで推測されていた。その結果、糖尿病患者はタンパク質摂取を減らすように促されてきた。しかしながら、イスラエルのあるグループは、高蛋白質(肉食)ダイエットと低蛋白質(菜食者)ダイエットを摂る非糖尿病者の2群でGFRの差を見出せなかった。さらに、長年これらのダイエットを続けても、腎異能は両群の間で差がなかった。デンマークからは、はっきりとした腎疾患をもたない一型糖尿病患者にタンパク制限食を課したところ、GFRは非常にわずかに低下しそのほかの腎機能の検査結果は無変化であったことが報告された。かなり以前の1984年、雑誌Diabetic Nephropathyに、GFRの上昇は糖尿病性腎症の発症の必要条件でもなければ十分条件でもないとする研究が現れた。

この証拠は、現在広く流布している、すべての糖尿病患者に対するタンパク質摂取制限の勧告が正当ではないことを示唆するものであろう。

この本は2005年が初版ですでに内容が古くなってきている。

栄養についての考え方は変化してきていますので、アップデートしましょう。

 

以下江部康二先生「糖尿病徒然草」より引用

 

<米国糖尿病学会>

これに対して、米国糖尿病学会(ADA)は

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

『糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。C

糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A』

糖尿病腎症のない糖尿病患者での理想的な蛋白質摂取量のエビデンスは、存在しないと断定しています。

さらに踏み込んで、糖尿病腎症を有する患者においても、「蛋白質制限は推奨しない」とランクAで断定しています。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。

その後も、この見解は踏襲されています。

糖尿病性腎症の初期から透析期まで、糖質制限は問題ない 〈腎臓内科医 塚本雅俊先生〉
http://itonaika.in/2178