認知症の人は何を必要としているのか
1.なぐさめ(くつろぎ)
優しさ、親密さ、苦痛と悲しみを和らげること、不安を取り除くこと、他人と親密になることから生まれる安心の感情である。他人を慰めるということは、その人のこころがばらばらに崩れそうになるとき、ひとつに保つことができるように思いやりを示し、力づけることである。
2.結びつき(愛着)
人間は非常に社会的な種であり、結びつきがもたらす安心感がなかったら、正常な働きをするのは困難である。認知症の人は、自分が「おかしい」と思う状況にいることに絶えず気づいており、このために結びつきのニーズを強く求めている。
3.共にいること(社会的一体性)
人間の社会性にはもうひとつの側面があり、それは集団で生活するよう進化したことである。
認知症の人々の社会生活はだんだん縮小していく。共にいることのニーズが満たされなければ、人は衰え、引きこもることになる。殻に引きこもり、完全に孤独な生活を送るようになる。しかし、共にいることのニーズが満たされれば、ふたたび「殻を破る」ことができ、仲間と一緒の生活の中に自分の居場所を見つけることができる。
4.たずさわること(主体的活動)
たずさわることは、個人的に有意義な方法で自分の能力や力を活用して生活の過程にかかわることを意味する。反対は退屈で、無関心で、無用な状態である。たずさわることを奪われたとき、その人の能力は衰えはじめ、自信を奪われる。
5.自分であること(同一性)
自分であることは、認知と感情でもって自分がだれであるかを知ることであり、過去との継続性の感覚をもつことを意味している。認知障害に直面しても自分であることを維持するため基本的な二つのことがある。一つは、その人の人生歴についてある程度詳しく知ることである。記憶の喪失のために、たとえ自分自身の物語で自分であることを保てなくなっても、まだ他人によって保つことができる。二つ目は、共感である。共感によって、それぞれ独自の存在として、汝として応じることができる。